複雑・ファジー小説
- Re: 運命の勇者。【お客様2名来訪!】 ( No.8 )
- 日時: 2012/05/13 21:43
- 名前: 春嵐 ◆gKQv5IanZU (ID: baDpX5T/)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!」
僕はベッドから飛び起きた。
ん。ベッド?ここは僕の部屋か。
頭の上では丁度7時を指した目覚まし時計が鳴り始めた。
「なんだ…夢か。」
そっと胸を撫で下ろした。
嫌な夢だった。
汗でパジャマはぐっしょりと濡れている。
まだ心臓がバクバク言っていた。
そんな夢から逃れるように急いで制服の袖を通した。
——僕の名前は有川優。
中学3年生だ。
もちろん、今日も学校がある。
下へ降りて行くと、もう母が朝食の準備をしていた。
「もう海斗君来てるわよ〜」
「えっまじで??いっつも海斗ははやいなぁ…」
そう言いながらパンを口に突っ込んだ。
今朝の夢、海斗にも言ってみようかな…なんて考えながら。
◆◇
僕らの通う学校は、この街…ユリシスの街の中央に建つ大きな学校だ。
僕の家は街の西側にあるから、通学に時間がかかる。
そんな僕の退屈な通学時間を救ってくれたのが海斗だった。
いまではいつも一緒にいて、学校ではみんなから「真逆コンビ」なんて言われている。
今日もいつもの大きな大聖堂の前を通って学校へ行く。
「あーあ、今日数学のテストだぜ…?優〜助けてくれぇ〜」
海斗がわめいた。海斗は勉強が苦手だ。
「んじゃぁ今日も勉強教えてやるよ!いつも鍛えてくれてるお礼!」
僕は勉強が比較的得意だと思う。
それとは逆に運動神経という贈り物を神様から貰い損ねた人間だ。
———そうこうしているうちに学校に着いた。
- Re: 勇者の鎮魂歌〜requiem〜 ( No.9 )
- 日時: 2012/05/14 16:13
- 名前: 春嵐 ◆gKQv5IanZU (ID: 9ydMs86F)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
重い鉄の扉を開けると、すぐに広い講堂がある。
まだ朝早い為か、生徒の数はまばらだ。
そんな講堂を通り、海斗はは教室には向かわずに体育館のほうへ向かった。
僕もその後をついていく。
体育館はまだ誰も使っていなかった。
「よっしゃー!今日もまだ誰も居ないな!じゃぁ優!今日も鍛えるぞ!」
「ん。海斗、今日も頼む!」
———僕らは毎日、この体育館である「訓練」をしている。
なんの訓練かって…?それは——
——この世界はいつの時からか、人々が武器を持ち魔法を使い、戦う世の中になってしまった。
それは大人も子供も関係ない。
上手く武器を扱えないものは、この世界を生きていくことが出来ないのだ。
全く、僕にとってこんなに生きにくい世界はないと思う。
もちろん、運動音痴の僕は、魔剣の扱いも得意でない。
——だから毎日海斗に「訓練」をしてもらっている。
魔法を習うのは運動神経は関係ないが、魔法は何しろ適性がなければ成り立たない。僕にその適性があるかは謎だったから、僕は魔剣を使うことを選んだ。
…出来れば実際に魔剣を使うなんて事態には巻き込まれたくないが。
「それじゃぁ、始めるぞ!まずは撃ちこみだ。優、俺の剣に撃ちこめ!」
「うん。」
そう言って僕が魔剣を振り上げた瞬間——。
「う…うわ、優!?」
ほんの一瞬だったが、眩しいくらいの大きな光が僕を包みこんだ…。
「優!…優…ゆ…ぅ」
海斗の声がどんどん遠ざかっていく。
穴の中をどんどん落ちていくような…そんな感覚だった。
「優!」
誰もいない体育館に、海斗の声が響いたのだった。