複雑・ファジー小説

Re: requiem〜勇者の鎮魂歌〜【更新!】 ( No.14 )
日時: 2012/05/19 23:32
名前: 春嵐 ◆gKQv5IanZU (ID: CymMgkXO)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

——しばらく僕らは一言も言葉を交わさず、早足で街の通りを抜けていった。
そうして街の外れの住宅が立ち並んだ所に差し掛かった時、青年は立ちどまった。
「これから、俺の家に行く。そこでは信じられないことを聞かされると思う。…だから、心の準備をしておいてくれ。」

そう言って青年は再び歩き出した。

——信じられないこと…?
一体何の話だ…?
僕の頭はさらに混乱した。

しばらくして、小さな1階建ての家が見えてきた。
丸太を積み上げて作った、ログハウスと言われる感じの家だった。
外には所々植物が育っていて、良い感じだ。

「さぁ、入って。」
「…お邪魔しま…す。」


◆◇

中に入ったとたん、木の独特の香が漂ってきた。
ふかふかの絨毯が床に敷かれていたり、吹き抜けの天井があったりして、想像していたよりもずっと居心地のいい家だった。

そして青年はくるりと僕の方を振り返った。
「ここが俺の家だ。…あと、まだ言って無かったが、俺の名前はルディ。ルディ・ショーンだ。17歳。君は?」

僕は少し緊張しながらも、青年に名前を名乗った。
なぜだかわからないが、青年の笑顔は心が落ち着く。
「僕は…有川優。15歳です。」

「そっか、じゃあ、優って呼ばせてもらうよ。それと…さっきの男の事なんだけど…。」

その瞬間、僕の表情が暗くなったのが自分でもわかった。

「あの人、今日死ぬ予定だったんだ。」

「え…今日?」

「そう。とんでもない罪人で、今日死刑になることが決まってたんだけど…逃げ出したんだ。それで優が襲われたっていう訳。」

「…そうだったんですか…。」

でも…それでも…。

「それでも、人の命を人の手で奪うっていうのはよくないって今思っただろ…?」

思っていたことをズバリと当てられてしまったので僕は仕方なく黙ってうなずいた。