複雑・ファジー小説
- Re: 僕と家族と愛情と【オリキャラ残り4人!投稿お願いします!】 ( No.128 )
- 日時: 2012/09/17 15:31
- 名前: ナル姫 (ID: 0inH87yX)
小十郎は嘘をつかない。それは伊達の家臣なら誰でも知っている。つまり、小十郎が言った事に対してそれは嘘だと言っても、それを信じる人はいない。
…て、それはどうでも良い。
取敢えず現場は依然として…寧ろ更に大混乱である。
「こッ…この子供が以前仰っていた政宗様の弟君…!?」
綾がポカンとして政宗に訊いた。対して、政宗は頭を掻いて苦々しい顔。
「…成実様が言っていた…蒼丸君…?」
目に涙を浮かべながらもポツポツと話し出す光に、成実は溜息を漏らしながら頷く。たまにの話だが、この同僚…主である従弟の側近は、空気を読まない事がある。
「すっ凄い可愛いです!流石政宗様の弟様ですねっ」
先程自身を泣かせたのを誰だか忘れたのか、光は蒼丸の頭をスリスリと撫で回した。
「あ、あの?」
戸惑いながら問い掛ける蒼丸に光はハッとする。
「あ、すいません…つい…」
光は少し崩れた着物を綺麗に直し、ふんわりとした少し幼い笑顔で蒼丸を見詰める。
「初に御目に掛かります。成実様の正室、錦織家出身の光と申します。以後お見知りおきを」
可愛らしい声で柔らかく言葉を発した光に、蒼丸はどこか安心感を覚えた。そして、次に自分に斬り掛かろうとした女性を見てみる。女性は、刀を仕舞い、その場に跪いた。同時に、銀色の綺麗な髪がフワリと揺れる。
「政宗様の部下、最奥綾と申します…先程はとんだ御無礼をつかまつり…申し訳ございません」
丁寧に謝る綾を見て、蒼丸はブンブンと首を振った。
「そんな!僕が悪いんです!光様を泣かしてしまったのは僕ですし…」
「しかし」
「気にしないでください!」
飽くまでも自分は平気だと言い張る蒼丸に、綾も笑い返した。どうにか丸く収まったようだ。…ただ、政宗だけがつまらなそうな顔で部屋をあとにする。
『弟』
「政宗様、朝餉は如何なさるおつもりで?」
小十郎の声に、要らぬと小さく彼は返した。
「食わねぇと又痩せるぜ?」
冷やかした成実の顔面に拳をぶちこみ、従兄が怯んでいる間に襖を勢いよく閉める。蒼丸は服を掴んで、奥歯を噛み締めていた…。
___
夕方、岩城氏居城、大館城前—…。
「ん?何だお前!?止まれ!」
「とっ止まれないんです〜!!わっぶつかる〜〜!!」
門番と馬が衝突した。馬に乗っていた少年はすぐに起き上がり、門番を揺さぶる。
「ごめ…じゃない!すいません!!大丈夫!?ですか!?」
「う…?」
「あ、起きた…良かったー…」
門番は起き上がり、少年を見詰めたが、誰だかさっぱり分からない。
「お主は…」
「えっと、政宗様からの伝言を伝えに来た竹葉佳孝といいま…申します」
「マサムネ様?」
「あ、伊達家の…」
「あぁ、伊達政宗殿か。若様の親類の」
若様、とは岩城盛隆の長男、常隆のことだ。盛隆は輝宗の兄。常隆と政宗は同い年で、従兄弟同士になる。
「では、何か印になるものを…」
「これでいいですか?」
佳孝は小さな箱を取り出した。政宗に渡されたもので、岩城への詫びだ。小さく竹に雀の家紋が掘られている。
「良いでしょう、中へどうぞ」
門番は門を開き、佳孝を中へ招き入れた。
___
「私が岩城の次期当主、常隆だ」
優しそうな目、茶色の柔らかい髪は政宗に似ている。佳孝は深く頭を下げた。
「伊達家家臣、竹葉佳孝と…申します。此度は政宗さ…君主、伊達政宗公より、伝言を伝えに参り…馳せ参じました」
早速駄目な感じの挨拶になってしまったが、常隆は微笑してそれを見守る。周りの家臣達も暖かい目で見ていた。自分の周りから小さく聞こえる笑い声に顔を耳まで赤くしながら、佳孝は今回の事の説明を始めた。