複雑・ファジー小説
- Re: 僕と家族と愛情と【オリキャラ残り4人!投稿お願いします!】 ( No.130 )
- 日時: 2012/09/22 11:18
- 名前: ナル姫 (ID: 2eNHBjew)
「成程な。では政宗殿や咲姫殿は無事なのだな?」
「はい」
「相分かった。ではそちらの準備が整い次第、婚儀としよう。また連絡を寄越すように頼む」
「分かり…っ畏まりました!」
深く頭を下げる佳孝を、常隆は微笑んで見つめた。こんな弟同様の可愛らしい部下がいるんだ、政宗は幸福者だろう。
「…そうだ、一つ政宗殿に伝言を良いか?」
「はい」
次の瞬間、彼は常隆が発した言葉に衝撃を受ける。そして、主がそれを了承するだろうかと、下手に言って斬られたりしないだろうかと真剣に考えるのだった。
___
翌朝、米沢城—…。
「ふあ〜…」
朝の光が差し込む廊下を、蒼丸は厨まで歩いていた。欠伸をしながら歩いていると、誰かにぶつかった。
「わっ」
トン、と軽く尻餅を付く。見上げると、自分と同じ様に漆黒の髪を持つ女性が自分を心配そうに見ていた。
「す、すいませんボーッとしてて…」
「いえ…」
女性は綺麗な細い目をさらに細めた。なんとなく体が強張る。昨日の朝会った、最奥という家臣と同じ様な雰囲気を纏っている。何を言えば良いか分からず、取敢えず御辞儀をしてその場を去った。
厨に着き、小十郎の膳が出来るのを待つ。蒼丸は可愛らしい顔つきの為か、侍女達は彼をよく可愛がってくれる。退屈はあまりしない。良い匂いがする。味噌汁の匂いだ。
「はい、蒼丸殿」
「あ、ありがとうございます」
殆どの侍女は蒼丸が政宗の弟だとは知らない。その為、様付けをしていない。城下で拾ってきたと、小十郎は誤魔化している。身分上、逆らったり疑ったりは出来ないのだ。
長い廊下を歩く。今度ばかりは欠伸なんてしていられない。
無事、小十郎の部屋の前に着く。善を置いて、襖を軽く叩こうとした瞬間。スッと襖が開き中から政宗が出てきた。
「あっ…」
驚きで声が出ない。やっと、小さくお早うございますと声に出すが、政宗は聞く耳を持たずにスタスタと歩いていってしまった。
「…ッ…お早うございますッ!!」
去る背中に大声で、最早叫びに近い挨拶。驚いたのか、彼の足が止まった。眼帯を付けている右側の顔が蒼丸の方を向く。そこに目は無い筈なのに、蒼丸の表情や格好を全て見透かしている様な気がして、怖い。それでも目を反らさない。
その時。
「!」
少しだけ、口が動いた気がした。何て言ったのかは分からない。口だけ動かしたのかもしれない。
…予想があっていれば、『お早う』と動いたと思うけれど。
やっと返してもらえた。
自然に口が綻んだ。
「蒼丸?」
中から聞こえる声で彼はハッとする。今行きます、と彼は返して善を持った。既に襖は開いている。中に入った。
「遅くなって申し訳ございません」
「良いのですよ」
コト、と畳の上に善を置いた。そして今日の仕事を聞く。
「今日は…そうですね。客間を掃除してもらいましょうか」
「客間を?誰かいらっしゃるのですか?」
「いえ、ただ…」
そろそろ来ると思いますから、と目を細める小十郎に、蒼丸は首を傾げた。
___
「政宗様、畠山が…」
「来たのか」
「いえ、輝宗様の下を訪ねたと…」
「……は?」
政宗は綾の報告に顔を顰めた。前の戦、小手森城の撫で斬りは奥羽の大名、勿論畠山にも衝撃をもたらした。小心者の畠山の事だ。自分の下へ和議を申し入れると思ったが、思い違いだったらしい。
「訪問の内容は」
「和議の申し立てです」
やはり。
「…後日、父上の下へ向かう」
「…承知致しました」