複雑・ファジー小説
- Re: 僕と家族と愛情と【オリキャラ残り3人!10月14日締切!】 ( No.138 )
- 日時: 2012/10/04 08:44
- 名前: ナル姫 (ID: 9IMgnv4t)
政宗と綾は虎哉がいる資福寺に着いた。突然の訪問だったが、彼は喜んで二人を迎えた。
「して、如何したのじゃ政宗」
「…それが…」
事情を説明した政宗。それを聞き終わった虎哉は、腹を抱えて笑った。政宗は溜息をついて、俺は真剣なんですがと顔を顰める。
「あぁ、すまんすまん…フフ…まぁ、任せなさい。すぐ踊れるようになる」
なら良いのですが、と小さく口に出す。その様子を微笑ましく見ていた虎哉は、政宗の横に控える綾を呼んだ。
「綾と言うたか」
「はい」
「お主、何でも良い。笛は吹けるかの?」
「舞の曲を…ですか?」
「うむ」
「一つくらいなら…」
「なら頼むぞ。待っていなさい、今持ってこよう」
虎哉は腰をあげ、奥の部屋へと入っていった。少しして、細い笛を持ってきて綾に手渡す。もう片方の手に、扇子を持っていた。
「何でも良い。吹いてくれぬか」
綾は少しだけ戸惑って、それから口を当てて笛を吹き始めた。綺麗な音色に合わせて、虎哉は舞う。軈て曲が終わると、虎哉の動きも止まった。虎哉は額に伝う汗を拭き取り、政宗の前に来た。
「懐かしいのぅ」
「?」
「覚えてないか?この曲、儂が最初にお前に教えたのじゃが」
全くもって覚えていない。キョトンとした顔で、目をぱちくりさせていると、虎哉は苦笑を漏らした。
「さて、やってみなさい」
差し出された扇子を受け取り、立ち上がる。綾を見れば凛々しい顔立ちで頷かれ、また顔を反らす。覚悟を決めて顔を上げたのと同時に、笛が吹かれた。
___
「政宗様の小姓…?」
「おう」
二人の容姿はそっくりだった。黒い瞳、身長も、肉のつき具合も。ただ、獅子丸の方が銀色の髪が短かった。
「…!もしかして、最奥綾様の…」
「あ、はい。綾姉様は従姉に当たります」
へー、と感心する蒼丸を、獅子丸が睨むように見る。お前は?と名前を聞いてきた。
「あ、僕は蒼丸と言います。片倉様の小姓です」
二人がピク、と反応する。何に対して反応したのかは分からないが、何やらコソコソ話始めた。
何だろう、と疑問に思っていると、後ろから蒼丸を呼ぶ声が聞こえた。そう言えば仕事の途中だったと、蒼丸は焦る。今行きますと返して二人に向き直った。
「じゃ、じゃあ僕もう行きますね」
「あ、はい…」
虎丸の返事を聞いてから一礼して、蒼丸はその場をあとにする。二人は、暫くそこにいた。
「蒼丸って言ったよな…」
「うん…」
「片倉様の小姓の蒼丸…と言えば…」
「「政宗様の弟…?」」
___
「はあ、はあ、はあ…」
「お疲れさん」
「誠にご苦労様です、政宗様」
結局政宗は、昼前に行ってから夕方まで舞い続けた。虎哉は満足そうに、満点の舞いじゃと言った。
「何回…舞ったと思って…いらっしゃるのですか…」
行きを切らしている政宗。だが虎哉の言う通り、彼は随分上達した。
肩で呼吸する政宗の横に綾が跪く。
「まぁまぁ…これで咲姫様の婚儀の支度が整ったではありませぬか」
「…そう、だな…」
「竹葉殿に伝言を頼んでは如何ですか?」
綾が言い終わるのと同時に政宗は立ち上がった。袴をパンパンと叩いて塵を落とす。
「帰るぞ、綾」
「畏まりまして」
「和尚、感謝いたします」
「良い」
頭を軽く下げた政宗の肩を、ポンポンと叩いた虎哉の顔は、まるで自分の息子を見ているかの様だった。
「へまするなよ。…頑張りなさい」
顔を挙げた政宗はやはり無表情。そのあと、本当に小さい、柔らかく幼い笑みを、虎哉に向けて見せた。
→次回、咲姫結婚!&納さん再登場、紅姫登場!