複雑・ファジー小説

Re: 僕と家族と愛情と【オリキャラ残り3人!10月14日締切!】 ( No.141 )
日時: 2012/10/09 19:01
名前: ナル姫 (ID: jSrGYrPF)  

婚儀の準備が整えられ、朝早く伊達は出発の為の身仕度をした。蒼丸は何故か、起きてすぐ小十郎に呼ばれた。疑問を抱いて部屋へ向かったが、その謎は直ぐに解消する。

「…」
「駄目じゃな」
「…」
「青と赤では相性が悪いことも分からんかクズめが。青が良いなら無難に黒じゃろう普通。というより婚儀に青はなかろう青は」

朝早くから呼ばれたと思えばこれか。蒼丸は苦笑をすることも出来ずに政宗の出した服を合わせていた。

「…小十郎」
「は」

小十郎を呼んだと思えば、小十郎はどこかに行ってしまった。用件を言わなくても分かる、相変わらず以心伝心な主従だ。

「少々待て」
「はぁ…」

少しして小十郎が戻ってきた。両手に箱を抱えている。埃っぽい箱を開けると、一気に空気中に埃が舞った。
何があるかという政宗の問いに対し、小十郎は全部出しますか?と問い返した。小十郎の問いに政宗が頷く。箱を逆さにするとバサバサと服が落ちてきた。それで更に埃が舞う。

「懐かしいな」
「これ…政宗様の服ですか?」
「昔のですよ」

蒼丸の問いには、政宗の代わりに小十郎が答えた。小十郎に目を向けていると、袴と服、そして上着が投げられた。

「着ろ」

背を向けたまま言う政宗。蒼丸は政宗と服を交互に見て、今着ている服から政宗が投げた服に着替え始めた。

「…流石ですな」

白い服に朱色の袴。上着は、白い布に金色の糸で所々に小さく刺繍の入った物だった。

「大きさはどうですか?」
「大丈夫です」
「なら良かった」

自身が着た服をもう一度眺めてみる。成程、自分で選んだ服の比ではない。感心していると、額に何か固いものが当たった。額を擦りながら畳に落ちたそれを見る。クシだった。

「髪を整えろ。右隣の部屋に納がいる。やってもらえ」
「な、や…?」
「納める、と書いてなや…女中です」

小十郎の言葉に二、三度頷いて蒼丸は部屋を後にしようとした。すると。

「蒼丸に良い格好をしてもらいたいのですか?」

小十郎がにっこりと政宗に問い掛ける。瞬間、政宗の顔が真っ赤になった。背を向けていた彼は、従者とその小姓にに振り返る。

「かっ…勘違いするな!ただっ花嫁の弟が変なの着ていたら困るじゃろっ」

クス、と小十郎は肩を竦める。ハイハイそうですねと返す。

「さ、蒼丸。納に解かして貰いなさい」
「は、はい!」

今度こそ蒼丸は部屋を出て、隣の部屋に行った。失礼します、と言い、襖を開ける。そこにいたのは、いつしか見たような女性。

「…あ!」


『わっ!、すいませんボーッとしてて…』
『いえ…』


(納さんって…この人!?)

呆然としていると、納が話し掛けてきた。

「…貴方は…」
「あ、僕蒼丸と言います!先日、廊下で…」
「あぁ」

相変わらず、細く綺麗な目。どうしましたか、と訊ねる声が遠くから聞こえるようだ。

「えっと、髪を…解かしてもらうように言われて…」
「分かりました」

ガチガチに緊張して櫛を手渡すと、慣れた手付きで納は髪を解かした。あっという間に、髪はさらさらになる。最後に、紐で髪が纏められた。

「あ、ありがとうございました!」
「いえ」

柔らかい笑顔はその髪に映えて、とても美しかった。


___



「姫!いつまで花を生けていらっしゃるのです!」
「良いじゃない。武術を磨くより、こうして花を見るのが私は好きなの」
「しかし…殿にバレたら…」
「心配性ね、小太郎。大丈夫よ、貴方を責めないようによく言っておくわ」
「小太郎は幼名です…私の名は春和だと何度も…」
「はいはい春和。兎に角安心して。怒らせないから」
「…全く、出来た人ですね貴方は…紅姫」