複雑・ファジー小説

Re: 僕と家族と愛情と【オリキャラ残り2人!10月14日締切!】 ( No.143 )
日時: 2012/10/11 19:05
名前: ナル姫 (ID: QDxiFvML)  

>>138で結婚と書いたにも関わらず結婚できませんでしたね…す、すいません…こ、今回こそ、結婚です!


秋の、澄みきった青い空に笛の音が鳴り響いた。綺麗に飾られた輿が、ゆっくり移動する。その中には薄く化粧を施し、美しい着物を身に纏った咲姫がいる。
腰が下ろされ、咲姫が中から出てきた。そして三谷家居城、晴海城内に入る。
中には、結婚相手の三谷家嫡男、貴道。その父貴之と、主の岩城盛隆、そしてその子、常隆。更に、花嫁の弟であり、金田家当主晴千代、補佐の木野定行、伊達家当主政宗、弟の蒼丸、側近片倉小十郎がいる。

咲は貴道の前で頭を下げる。その様子を見た貴道が優しい声で話し掛けた。

「頭をお上げください」

ゆっくりゆっくり、頭を上にするにつれ、彼女の長い髪がさらさらと肩から落ちた。

「…そなたが、咲姫か」
「はい」
「成程…誠に美しい。これから我ら二人は夫婦…伊達と岩城の為、共に生きましょう」

柔らかい声が咲を包み込む。はい、と応える咲の顔は、自然に綻んだ。


___



舞子が躍りを始め、皆はそれを楽しみ始めた。その後ろで政宗と常隆は互いに杯を酌み交わしていた。

「しかし、こちらからの同盟を受けると言うことは伯父上も爺様に対する怒りは収まったか?」
「まぁ…爺様もお亡くなりになられたしな…それに、外交は殆ど私の仕事だ。収まったとは違うかもしれん」
「…伯父上と爺様は仲が悪かったしな…父上も同じようなことだが」
「私の父と爺様の仲が宜しければ、今頃私が伊達家の当主、か…私の器には合わないな」
「儂がお前の上、と申すか?」
「あぁ」
「…お前でも良いのではないか?」
「?」
「…お前が当主になる予定であらば…今頃…」
「…」

常隆はコツンと、俯く政宗の額を軽く突いた。

「重い話しは無しだ、飲め」
「…」
「…そんなこと、今更考えている場合でもあるまい」

ほら、と酒を出し笑う常隆に、政宗も微笑で返す。それもそうか、と言いながら。

「あ、だがあまり飲むなよ」
「は?」
「舞って貰うからな。酔われては困る」
「……」

その頃、蒼丸は義理の兄となる貴道に隣に呼ばれていた。

「君が蒼丸君か」
「はい」
「凛々しい顔立ちだな、頼りになりそうだ」
「そんな事…」

ありません、という声を遮る様に、貴道は蒼丸の頭を撫でた。

「貴殿の姉は私が幸せにする。安心してくれ」

蒼丸は何も言えず、咲を見た。彼女はただ蒼丸に優しく微笑み掛ける。

「…はい!」


___



ポン、ポン、と鼓が鳴らされ、次に笛が音を響かせた。宵の明星が輝く夕方の空にそれらは吸い込まれていく。
舞台上では冠を被った政宗が、扇子を片手に持ちゆっくりと華麗に舞っていた。
曲調が変わり、動きが早くなる。右足の爪先だけを地に着けて、それを軸に体を反転させる。それと同時にパンッと扇子を開けば、客席から歓声が起こった。
蒼丸の隣にいた定行が、そっと蒼丸に、楽しそうですね、と耳打ちをした。そこで初めて蒼丸は気付いた。扇子を開いた時に見せた笑顔は、何時ものような偽物ではなかったと。
服も着こなす、舞いも出来る、戦術の種類も豊富で、剣術だって一流のもの。ただ、感情を正直に表すのは得意ではないけれど、それだけの話だ。やはり何もかも完璧な兄は、彼にはまだ遠く離れた所にいる。

(でもいつか…追い付きますよ)


『貴方は強くなる』


改めて固めた決意は、鼓や笛の音の様に夕闇に消えずに、彼の胸に残っている。



→次回、隻眼の侍女さんついに登場!&小十郎が…!?