複雑・ファジー小説

Re: 僕と家族と愛情と【オリキャラ残り2人!10月14日締切!】 ( No.144 )
日時: 2012/10/13 15:24
名前: ナル姫 (ID: a5oq/OYB)  

夜遅く、伊達一行は米沢に戻った。今までいた人が一人いない。何だか物足りない感じだ。
蒼丸と晴千代は疲れたのか、途中で眠ってしまった。


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翌朝。

「わああああっ!?」

蒼丸はいきなり飛び起き、辺りを見回した。そこに通りかかった綾が、彼の叫びに驚いて目をぱちくりさせ彼を見た。そこに主が通りかかる。

「朝から何じゃ…騒々しい」
「いっ今…!」
「…辰の刻(午前八時くらい)」

淡々とした口調で吐き出された言葉。蒼丸に冷や汗が流れる。

「あ…しかし、蒼丸様」

綾が蒼丸に話し掛けた。そういえばこの女性は自分がある時の弟だと知っていたな、と蒼丸は思い出す。

「今日は、朝餉を運ぶのは他の者がやりました故…」
「え?まさか他の侍女さんが…?」
「いえ」

説明を続けようとした綾だが、それは政宗に遮られた。自分で確かめたらどうだ、と呆れ顔で問い掛ける。
蒼丸は頭に疑問符を浮かべながらも、着替えを始めた。


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蒼丸が小十郎の下へ急いでいる頃、政宗は厨に来ていた。

「恋」

一人の侍女を呼ぶ。呼ばれた女性は右目に眼帯をしていて、侍女でありながら刀を持っていた。
墺宮恋、侍女である。

「何か御用で?」

恋が言うと、政宗は懐からひょいっと木箱を取り出した。何ですかこれは、と眉を顰める恋に、土産じゃと政宗は返した。
恋は木箱の蓋を外し、中身を見てみた。中身は笹の葉で包んである。笹の葉を一枚ずつ退ければ、そこに見えた物は羊羮だった。瞬間、恋の顔が紅潮する。

「政宗様…私は侍女ですよ?」
「侍女が甘いものを好きになってはならぬ等、誰も言っておらぬぞ?」

意地悪そうに上げられた口元。愛様に怒られます、とも恋は言ったが、了承済みじゃと政宗は返す。

「…敵いませんね…有り難く頂きます」
「それで良い」

仕事に戻れと政宗は告げる。次の瞬間。

「政宗っ様!」

ああ、このつっかえながらの敬語は…間違いない。

「どうした、佳孝」
「城内で、こんな噂がたっていま…おります!」

政宗は屈んで、佳孝の言う事に耳を傾ける。佳孝の口からは、信じられない言葉が出された。

「なん…じゃと…!?」


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「片倉様…」
「あぁ蒼丸。お早うございます」
「お早うございます。今朝は申し訳ございませぬ」
「良いのですよ。そうだ、蒼丸に紹介しましょう」

小十郎は、部屋の奥の方に声を掛けた。すると、蒼丸より二つ程年上だろう、男児が出てきた。

宜益タカマスです。私の小姓ですよ。貴方の少し先輩ですね」
「宜益様…?」
「貴殿が蒼丸殿か」

低い声だが、友好的であった。短く整えられた前髪に、首筋辺りまでの黒い髪。瞳も真っ黒だった。

「よろしくお願いします」
「こちらこそ」

互いにお辞儀をした所で、小十郎が二人に話し掛ける。

「蒼丸、私はそろそろ妻がやや(赤ちゃんの事)を生む頃なので一度城を留守にします。その時には宜益を連れていくので、貴方はここにいて下さい」
「はい」

その時だ。

「小十郎」

政宗が来た。話があると言い、政宗は小十郎を連れて行った。


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数日後。

政宗に落ち着きがない。蒼丸はそう思った。いや、政宗だけではない。城中皆が。思いきって、政宗に聞く事にした。

「政宗様…何かあったのですか?」

政宗は目を細めた。奥歯を噛み締めたかと思うと、突然蒼丸の服を掴んでその場に崩れる様に座り込んだ。

「まっ政宗様…!?」
「……てくれ…」
「え?」
「止めてくれ…!」
「な、何を…」

政宗は、佳孝から聞いた言葉を弱々しく吐き出した。

「小十郎は…生まれた子が男児なら殺す気じゃ…」
「!?」

「小十郎を…止めてくれ…!!」