複雑・ファジー小説

Re: 僕と家族と愛情と【オリキャラ残り2人!10月14日締切!】 ( No.152 )
日時: 2012/10/14 09:03
名前: ナル姫 (ID: 0M.9FvYj)  

「子供…殺すって、どういうことですか!?」

蒼丸は座り込んだ政宗に必死に訴えた。政宗は俯いたまま、ポツポツと語り出す。主にまだ嫡子がいないのに、自分が先に嫡子を得るなど不孝。それが小十郎が政宗に話した全て。

「止め…なかったのですか?」
「聞くと…思うか?」

震えている声。何時もの兄よりずっとずっと弱々しい。心做しか、体も震えているかの様に思える。
何時も自分を疎む兄だけど、養父を策略で亡き者にした兄だけど…『家族』なんだ。
力になりたい。

「…政宗様」

蒼丸は片方の膝を畳に着けて、主に優しく話し掛ける。

「安心して下さい。僕はまだ未熟ですが…必ず、片倉様を止めて見せます。片倉様がいらっしゃる城までの案内を付けて下されば、今すぐ向かいましょう」
「私が行きましょうか」

蒼丸が言いきった瞬間、名乗り出る女性。その風采に蒼丸は目を見開く。当然だろう。其所には兄と同じ、右目に眼帯をつけた女性がいたのだから。

「貴方は…」
「墺宮一族出身の、恋と申します」

二人のやり取りを見た政宗が口を開いた。なら、頼むと小さく呟いた声は広い部屋の中で今にも消えてしまいそうで、それは今現在の政宗そのもので、どうしようもなく不安にさせる。

「では、行って参ります」

でも、大丈夫。伊達家の当主、僕の兄上だから。自分に言い聞かせれば、少しは凛々しい声を出せたかな。
蒼丸は馬小屋へ急いだ。

「久し振りだね、空。火急の用事だ、急ぐよ」
「ブルルッ…」

鞍を取り付ける。手綱を持って慣れた手付きで空に乗った。恋も、既に馬に乗っていた。

「行きましょう」
「はい!」


___



一方、政宗はまだ畳の上に座り込んでいた。米沢で流れた噂を心配してか、蒼丸と恋が発った後、入れ替わるように成実がきた。

「…梵天丸」
「…」
「噂は…」
「…事実だ」
「…そっか」

政宗の横に座り、彼の頭の上に手を置く。

「心配すんなよ…蒼ならやってくれるって」
「…そうか」
「そうだよ」

だからそんな顔するなよ。お前らしくねぇから。

「此処にいてやるから…不安がるな」

『姫!若様に何て事を!』
『何を言うか!こやつは我子、梵天丸ではないッ』

(辛いよなぁ…)

我子じゃない、何て言われるのも。


___



「やはり間引こう。主より先に嫡男を得るなど不忠…武士の妻として分かってくれ」

小手森城の一室。生まれたばかりの赤子を抱いて涙を流す女性の前に、何時もとは違う厳格な雰囲気を纏った小十郎がいた。我子を殺す。主への忠誠の為…いざ。

「待って下さいッ蒼丸殿ッ」
「片倉様ッ!」

ダンッと勢いよく音を立てて襖が開いた。其所には見慣れた顔が二つ…蒼丸と宜益。

「…僕を、米沢に置いたのは…子を殺すのを邪魔しないようにだったんですね」
「…そうです」
「でも僕は此処にいます…何故だと思いますか?」

小十郎が眉を寄せる。蒼丸は小十郎を真っ直ぐ見据えた。

「政宗様が…自分では止められなかったって言って僕に縋ったんですよ!?」
「!!」
「僕を嫌う人がそうまでして貴方を止めようとしているんです!何で気付かないんですか!?政宗様は殺すなんて事望んでないのに!そんなの忠義じゃない!只の自己満足です!!」
「—ッ!!」
「蒼丸殿ッ」

諌めるような宜益の声は無視。蒼丸は女性に近付いた。そして赤子を抱き上げる。

「小さい…それに軽い…守ってあげましょうよ」

顔を上げて小十郎を見詰める。彼の口元が、微かに緩んだ。

(今回は…私が間違っていたようです)

小十郎は蒼丸の頭を優しく撫でた。

「城に…戻りましょうか…この子も共に」
「…!はいっ!」


→次回、遂にあの関西弁キャラ登場!