複雑・ファジー小説

Re: 僕と家族と愛情と ( No.16 )
日時: 2013/07/25 13:57
名前: ナル姫 (ID: 6em18rVH)
参照: http://p.tl/y1vI

1584年(天正12年)、伊達藤次郎政宗が父、輝宗から家督を相続した。輝宗はまだ四十二歳、政宗自身も十八歳で年少を理由に辞退を申し出たが、最終的には輝宗が押し切った。その背景には、政宗に片倉小十郎(景綱)や伊達成実など有力な家臣が多く居ることも関係していた。
こうして、伊達家十七代当主は政宗に決定したのだった。


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「政宗様になったぁ!?」

哉人は驚きの声を挙げた。それを蒼丸が不思議そうに見る。

「父上……どうかしましたか?」
「あ、い、いや……」

不思議に思ったが、訊かないことにした。
相続を祝う為、米沢城に行くその前夜。蒼丸と定行は政宗について話していた。

「冷たい?」
「はい……冷たいと言うか、酷と言うか……兎に角、そう言うお人だと聞いています」
「ふーん……でもそれくらいじゃないと戦国は生き難いよな」
「そうですが、それなりの慈悲も大切ですよ!」

諌める様に定行は言った。

「分かってるよ……」

拗ねた口調で応えると、定行はハッとして蒼丸を見た。言葉がキツかったか?案の定、蒼丸はいつも優しい定行に少し怯えている様だった。

「あ……申し訳ございません……私としたことが……」
「あ、良いんだ定行、謝らなくてもさ……にしても……」
「?」

継ぐのが早くないか、蒼丸はそう呟いた。政宗はまだ十八だ。今までにその位の年齢で家督を継いだ前例が無い訳ではない。だがそれは、父と子の間で対立が起こった場合や、当主が急死した場合だ。政宗の場合はそのどちらでもなく、『譲られた』のだ。

(蒼丸様には……教えたらいけない)
「輝宗様にとって、政宗様が大切な物だからですよ」
「えー? そんな理由?」

定行はただ笑顔だった。


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「家督も無事継いだ……相続式で儂は伊達家十七代当主となる」
(これで天下は儂のものじゃ)
「……」

政宗は目を細めて空を見た。

『織田が……天下を掴もうとしているな……惜しいもんよ、儂も天下を見たかった……』
『……父上! じゃあ僕が天下とりまする!』
『! ぼんて……』
『僕が織田を倒して、父上に天下を見せます!』
『……ああ、梵天ならきっと出来る……』

「儂が天下を……」

とって見せる。