複雑・ファジー小説

Re: 僕と家族と愛情と【ハロウィンイラストリク10月27日まで】 ( No.160 )
日時: 2012/10/15 16:07
名前: ナル姫 (ID: hH3N1CbI)  

『我子…愛しき梵天や。食べて遊んで、大きくおなり。沢山学んで強くおなり。母に天下を見せとくれ…』

「母…上…」


(昔の夢でも見てんのか…)

彼が来て直ぐ、政宗は眠りに落ちた。昨晩、寝れなかったのだろう。理由は分かる。
フウ、と息を着いたその時、納がこちらに小走りで来た。

「帰ってきました」
「分かった」

短く返事をすると、政宗の体を揺さぶる。

「起きろ、梵天丸」
「ん…」

ゆっくり体を起こす。帰ってきたぞ、と成実が言うと眉間に皺を寄せた。
まず来たのは恋。相変わらず表情はあまり無い。次に小十郎と蒼丸、そして宜益が一緒に来た。小十郎の腕には、生まれたての赤子が抱かれていた。

「小十郎…」

声を掛けられると、小十郎は頭を下げ、ご迷惑をお掛けしましたと謝罪した。蒼丸が横で嬉しそうな顔をする。

「この子も『小十郎』ですよ」
「へ?」

聞き返した成実に小十郎は言う。

「片倉家を継ぐ者に代々…小十郎と名付ける事にしたのです」
「ったく…ややこしいことしおって」

嬉しそうに政宗は返した。そして、目線を少しずらせば蒼丸と目が合う。

「…正直、止められるとは思っていなかったが……取敢ず、礼を言おう……感謝する」

言いきった瞬間そっぽを向いた。耳まで赤くなっていたら、正直意味がないが。

「しっ成実っ散歩に行くぞ!」
「はいよ」

苦笑を漏らして成実もその場を後にする。
笑顔が、溢れた。


___



一週間後、蒼丸に帯刀が許された。小十郎の事で世話になったとか理由を付けて政宗が言い出した物だ。柄の蒼い自分の刀。自然に笑みが零れる。それに今さっき、小十郎が彼に小遣いをくれた。ここ一週間働き詰めだったし、たまには城下を散歩したって良いだろう。
と言うことで、今彼は城下にいる。団子屋にでも行こうとしていたその時。

「そこの刀持ってはる僕、何処行くん?」
「!?」

聞き慣れない言葉に驚き振り向けば、銀色の髪を揺らして歩いてくる青年が目に入った。横にもう一人、町人風な格好をしる男性。二人とも笑顔でいるが油断ならない。思わず蒼丸は警戒心を込めた目で構えた。刀の柄に手が伸びる。

「警戒してますよ和泉殿」
「何やねんその目?お兄さん達傷付くわぁ。なぁ睦草はん?」
「……」

蒼丸は警戒を解かない。その様子を見た睦草と呼ばれた青年が笑い出した。何で急に笑い出したのか…気分が悪くなる。

「何ですか、急に笑い出して」
「ううん、別に」
「怪しいなぁ睦草はん」
「僕からしたら二人とも怪しすぎるのですか」
「怪しすぎるらしいけど」
「悲しいなぁ、帰ってきて早々これかいな」

和泉、という青年の言葉に、蒼丸は敏感に反応した。
『帰ってきて』…?この変な言葉を使う人は奥州の人間なのか?
ますます蒼丸は警戒した。さっきより腰を低くして左足を前に出す。

「だからそんなに警戒せいとんて?儂らは怪しいもんちゃいますから」
「殺されたいんですか」

睦草も和泉もニコニコと笑みを崩さない。何なんだこの人たちは。

「怖い人になってしもうたなぁ」
「哉人はいい人だったけれど…」
「え?」

なぜこの二人が養父を知っている?本当に何者なんだ?しかも、あたかも自分を知っているかの様な言葉を発した。怪しい、を通り越して怖い。

「貴方達…誰なんですか…!?」

「俺は奥州米沢城城主、伊達政宗が家臣、睦草尚継」
「同じく伊達政宗が家臣、和泉凉影や。…久しゅうございますなぁ、政宗様の弟君はん」



→な…なんか尚継君と凉影君、第一印象最悪です…すみません…。