複雑・ファジー小説

Re: 僕と家族と愛情と【ハロウィンイラストリク10月27日まで】 ( No.173 )
日時: 2012/10/16 19:11
名前: ナル姫 (ID: 6xeOOcq6)  

一方米沢城では、一人の少女が気だるそうにその廊下を歩いていた。

「ふあ〜あ…ねむ…仕事面倒…」

ボサボサに伸びた髪、灰色の瞳、低めの身長。そして…その背後から忍び寄る影。

「れ〜ん〜!」

怨念の隠った様な声に少女の足が止まる。少しずつ後ろを向いて、背後にいる人物の姿をその目に捉えると、一目散に逃げ出した。

「待たぬかっ」
「グッ!?」

首根っこを掴まれ後ろに倒れた。背後にいた人物は、倒れた彼女を上から覗き込む。

「ま、政宗様…」

彼女がそう呟くと、彼女を捕まえた人——政宗は、作り物の笑顔でこう言った。

「風邪は治ったか?」
「…はい」
「長い風邪だったのう?」
「は、はい…」
「ま、それはよい。それより…」

政宗は少し乱暴に少女を立たせた。そして懐から櫛を取り出す。少女が明白アカラサマに嫌な顔をした。

「今日こそ、その伸び放題の髪…解かさせて貰うぞ」

怒りの雰囲気が流れ出る様な政宗の口調。素直に従った方が良いのは分かるが、生憎彼女の性はそれを許さなかった。再び体を逆方向に向け走り出す。

「待てっ蓮!」

運動が得意な政宗の足でも追い付けない逃げ足の早さ。遂に逃げ切られ、政宗は息を切らしながら、恨めしそうな顔で彼女が逃げた方向を見た。

少女、名を、桐定蓮。


___



昼頃、蒼丸が政宗の家臣を名乗る二人——凉影と尚継を米沢に連れてきた。と言うのも、家臣というのを信じている訳ではなく、本当に家臣と言うなら政宗に会えと蒼丸が言い出したのだ。

そして。

「久し振りじゃな、凉影、尚継」
「な、本当やったろ?」

事実、と言う事が重く蒼丸にのし掛かる。

「すっ…すみません!!僕っ…!わ、悪気はないんですけど!そのっ…!」
「良いよ、別に。怪しく思うのは仕方ないだろうし」

尚継が笑いながら蒼丸を許す。申し訳無さで一杯の蒼丸は何度も頭を下げた。

「改めて、自己紹介しましょか。儂は和泉凉影。堺の方の出身でなぁ、言葉聞きなれへんかもしれへんけど…まぁ馴れてくれや」
「俺は睦草尚継。俺達二人は一年程上杉の方に諜報活動をしに行ってて…昔会った事があるけど、覚えてないかな」
「覚えて…無いです…」
「仕方無いわなぁ」

朗らかな笑い声をあげる凉影と尚継に、本当に申し訳なくなる。

「…あれ?でも僕が政宗様の弟って何で分かって…」

政宗自身、蒼丸が弟だと言うと気分を害するが、二人に質問する場合は仕方無いだろう。

「俺は片倉様から教えられて」
「儂は蒼君の目ぇ見た瞬間分かったで。色そっくりやもんなぁ。蒼君とて昔は輝宗様に似とったけど、今は義姫様似やね」

聞いた瞬間、蒼丸は凉影の観察力に目を見開いた。成程、こんな人なら諜報活動に向いている。

「凄い…ですね」
「睦草はんも凄いで?なんたって尋問と聞き出しの技術は伊達家一や」
「人聞きの悪い…」

少しムッとする尚継に軽く頭を下げた凉影。その様子に蒼丸が笑みを溢した瞬間、尚継がはたと顔をあげて、政宗を見た。

「時に政宗様、あの女子はどうなったんですか?」
「あー…蓮の事、か」
「あー、気になりますなぁ。あのはっさい(お転婆)娘はん、少しは大人しくなりましたかいな」
「お転婆と言うより…単に身嗜みがだらしないだけじゃ」

会話を聞いている蒼丸の頭上に疑問符が見えるが、取敢ず無視する政宗と、気付かない二人。

「今朝も又逃げられての…逃げ足の早いったらないわ」

政宗が言った瞬間、お茶をお持ちしましたと言う声と共に襖が開く。
そこには話題となった少女がいた。



→蓮ちゃんが登場です!勝手に逃げ足を早くしちゃいました…。因に、行動のモデルは大河ドラマ平清盛の政子です。すみません…。