複雑・ファジー小説

Re: 僕と家族と愛情と【コメを下さると嬉しいです…】 ( No.203 )
日時: 2012/11/01 16:48
名前: ナル姫 (ID: 1wSGUlCd)  

「蓮っお前は政宗さ、様に迷惑掛けすぎなんだよ!」
「は?髪型くらいで追い回される方が迷惑なんですけど?てゆうかワンコに言われたくない」
「おっ俺は政宗、様の犬じゃないっ!」
「あっそ…アンタその敬語なんとかしたら?仕事まともに出来ないんじゃない?」
「うぐっ…」

朝から騒がしい伊達家…と言うよりは、とある二人が騒がしいだけなのだが。一人は、政宗の家臣、竹葉佳孝、もう一人は侍女の蓮。この二人は顔を会わせると必ず喧嘩する。

「ま、ワンコには関係無いから。じゃ」
「あっ仕事休む気か!?」

吠える佳孝に逃げる蓮。その前に立ちはだかるのは睦草尚継。

「何処行くのかな、蓮?」
「…睦草様…」
「尚継、殿!ソイツ止めて下さい!」
「蓮、皆様の迷惑になるから仕事をサボるのは止めてね?寧ろサボるなら何で此処にいるのかな?それに御家族にも迷惑掛かるんじゃないかな?政宗様に追い掛けられないうちに、早く仕事に戻ろうね?」

さらさらと口から発せられた言葉が蓮を圧迫した。蓮を仕事に行かせるようにする、だなんて、こういう仕事が得意な尚継にとっては朝飯前なのだろう。渋々職場に向かう蓮。

「助かりました、尚継ど、の!」
「いやいや…」

こんな風に、何時もと変わらない朝がやって来て、また皆が何時もと変わらない仕事に励むのかと思っていた。


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畠山氏の降伏が、遂に叶った。輝宗を通じて実現した降伏だ。畠山家当主義継は、後日輝宗の所に挨拶しに行くらしい。

「しかし…畠山も大したことありませんね。同じ戦国に生きる者として呆れます」
「それも生きる術の一つと考えれば仕様もあるまい」

綾の言葉に、淡々とした口調で政宗は答える。

「…まぁ、何に使える訳でも無いだろうが」
「…そうですね」


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「は?何で俺が宮森?」
「政宗様が言うてたんやけどなぁ、理由は聞けへんかったのです。成実様には一時的に宮森に行って欲しい言うてただけで…心配なんやちゃいます?輝宗様が」

綾と話した後、政宗は凉影に成実に伝言するように言った。内容は、畠山の完全な降伏が終わるまで、成実は宮森城に居るようにと言う事だ。宮森には現在輝宗と基信、そして政景がいる。

「まぁ良いけどよ…あ、そうだ!」


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「あーおまーるくん!」
「…何ですか成実様…」

仕事中に成実が蒼丸に話し掛ける。何故だかご機嫌だ。

「宮森に行かねぇ?」
「宮森、ですか」
「おぅ!」
「…何故?」
「俺の気紛れ」

苦笑いで返すと、眉毛を八の字にする。その様子に又苦笑いになるが、分かりましたよ、と伝えると満面の笑みが返ってきた。

「じゃ、行くぞ!」
「今からですか!?僕仕事が…」
「宜益がいるだろ!もし小十郎が怒っても俺の所為だから大丈夫!」

貴方が怒られる事を心配しているのですが、と言おうとしたが止めた。余りにも彼が楽しそうな顔をしている。そう言えば、成実がこんな顔をするのは久し振りだ。

(反論は…出来ないな)
「はいっ」
「よし!馬を出せ!出発だ!」

彼等は馬小屋へ向かった。


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「…は?」
「や、止める暇もなく行ってしまったんですわ。蒼君連れてく言いはって、そのままあっという間に」

もう、溜息しか出ない。何の為に己の従兄は従者の小姓を宮森に連れて行くのか…。

「連れ戻します?」

側に控える綾が聞く。

「良い…どうせ下らない事…」

ハッと気が付く。

連れて行った目的は、多分。

『政宗、もし蒼丸が伊達の人間だと分かって、伊達に戻っても、弟を嫌うなよ?

…仲良くやりなさい』