複雑・ファジー小説
- Re: 僕と家族と愛情と ( No.25 )
- 日時: 2013/07/25 14:03
- 名前: ナル姫 (ID: 6em18rVH)
- 参照: http://p.tl/Yp8d
「…」
「…?」
「…」
「あの…何ですか姉上」
蒼丸の部屋にいきなり入って来た彼の姉—お咲は、じっと彼の顔を見つめた。こんなことをされれば誰だって不快だろうし、不思議に思うだろう。勿論蒼丸だってそうだ。
「やっぱり似てるわよね?」
「へ?」
「アンタ、政宗様に似てるわ」
「はい!?」
何を言っているんだという顔で蒼丸はお咲を見た。
「髪の色は、政宗様は薄いし、アンタは真っ黒だけど…目の色はそっくりじゃない」
少し青み掛かった黒の瞳。
「…」
(政宗様は…十二の時、僕に似てたのかな…?)
不意に、そんな想いが浮かんできた。そして、すぐ切り捨てた。下らない。だから何だと言うんだ。
考え込んでいると、お咲が彼の顔を除き込み、何考えてんのー?陽気な声で聞いてきた。人が真剣なときに…と、蒼丸は顔を顰める。
「はいはい…もう用は済んだでしょう?出てください」
「ちょっと!?」
まだ自分より少し背の高い姉を部屋から半ば無理矢理押し出し、襖を閉めた。そして溜め息を漏らす。
(似てる…かな?…自分じゃわからないよ…)
家族には似てないのに、主には似てる、か…変なの。
___
その頃、米沢城内…いや、伊達家一門に波紋が広がっていた。輝宗による早すぎる家督相続に対し、政宗の母で輝宗の正室であるお東(義姫)が不満を漏らしたのだ。
自室に篭っているお東は、何処にぶつけるべきか分からない苛立ちを抱えていた。その様子を政宗の実弟で、今十七歳の政道(小次郎)が見ていた。
「っ…!!何故じゃ!?何故あのようなうつけ者が家督をっ…!!」
「…母上、致し方ありませんでしょう?…母上が私を兄上より大切にするのと同じ様に、父上も私より兄上を大切にするのです」
言うと、お東は物凄い形相で政道を見た。政道は目を伏せている。諦めるが宜しいかと、と呟いた政道の手を彼女は取った。そして瞳を見つめる。
「何て事を言うのじゃ!?あやつより真、そなたの方が当主に相応しいと言うに!!」
「母上…」
「良いか?そなたが当主になるのじゃ!!伊達を背負うはそなたぞ!!」
政道は奥歯を噛み締めた。
(私は…兄上と争う気はまるで無いのに…)
そんな会話が弟と母の間で繰り広げられているとは露知らず、政宗は相変わらず作り物の笑顔を顔に浮かべていた。…が、その笑顔も引き顰っている。
その笑顔を見ていた、彼の側近である片倉小十郎も、また顔を顰めたのだった。
その目の前にいるのは、見るからに頼りない大内家当主、大内定綱。