複雑・ファジー小説
- Re: 僕と家族と愛情と ( No.309 )
- 日時: 2013/01/22 22:16
- 名前: ナル姫 (ID: j69UoPP8)
強くなりたい。
頭を良くしたい。
迷ったら、訊きたい。
悲しい時は、泣きたい。
強くなりたいのなら、修行すれば良い。
頭を良くしたいのなら、学べば良い。
迷ったのなら、訊けば良い。
悲しい時は、泣けば良い。
大丈夫。
父上は何時でも其処に——……いない。
父上はもういない。
世界中何処を探しても。
でも俺はもう大丈夫。
独りじゃないって気付いたから。
自分で歩き出せるよ。
___
「…で、お話とは?」
政宗に集められた家臣達は、不思議そうな顔で政宗の言葉を待ったが、政宗は中々言い出さない。
「…わ…」
「「「わ?」」」
成実、佳孝、尚継の言葉が被る。家臣達のしびれが切れそうになった時……。
「……悪かった」
『!!!?』
政宗以外全員の思考が一致した。
——え?今……謝った?
政宗の顔は湯気が出そうな程赤くなっていた。
「だから、その…落とすのは…ゆっくりで、良いから!!?」
「偉いっ!」
何時の間にやら政宗の背後に回っていた成実が、政宗の肩に右腕を回していた。その結果政宗は間抜けな声を挙げてしまったのだが。
「何だよー?言えるじゃんかー?なーぼんてブゴッ!!」
調子に乗り始めた成実を制裁せんと、政宗の左肘が成実の脇腹に入った。その様子を見ていた家臣達の顔に笑みが浮かんでいく。
「仕方ありますまい」
言ったのは小十郎だ。
「我ら家臣一同、政宗様の指揮の下全力で戦いますよ」
と、綾。
「畠山なんてすぐ落として見せましょう」
と、尚継。
「初陣では、絶対に活躍して見せる…見せます!」
と、佳孝。
「儂も出来る限りの良い作戦考えますで」
と、凉影。
そして最後に。
「ったく…やっぱお前はこうじゃなくちゃな」
政宗の肩に、ポンと手を置いて。
「俺は暴れるしか出来ねぇから、指揮を宜しく頼むぜ、『政宗様』!」
___
法螺貝が鳴り響き、掛け声と共に兵士達が戦場を駆け回った。今回もすぐに伊達は引き揚げるだろうと思っていた畠山だったが……。
「まだか!」
義継の嫡男、国王丸は憎々しい顔でいた。何しろ、今まですぐに引き揚げていた筈の伊達軍が中々引き揚げないのだ。それどころか今まで見た事もないような団結力を見せ、確実に畠山勢を押している。
国王丸は有力家臣二人に命じる。
「丹波、稲葉!父の仇だ!確実に伊達を落とせ!」
「は!」
「畏まって候!」
今の自分が、つい昨日までの政宗と同じ様な状態だとは知らず、怒りをあちこちにぶつけながら。
___
「我こそは、伊達家家臣竹葉佳孝!我が刃の餌食になりたくなければ道を開けろ!!」
初陣を立派に飾ろうと意気込んでいた佳孝の声が響く。もっとも、少女の様な顔の佳孝には鎧もあまり似合わず、何とも見た目は歪なのだが。
大声を出した佳孝の後ろで、何かあった時の補助として綾がいる。出来ないのは敬語だけなのか、と苦笑を漏らした。
「はっ!やぁっ!!」
そんなことを考えている間にも、佳孝は馬の上で長い槍を振り回し、既に何人かの足軽を討ち取っていた。
(女だからと言って…負けるわけにはいかないな)
不敵な笑みを浮かべ、綾も自らの刀を抜いた。
___
「…出来た」
小浜城の一角、光の差し込まない部屋で凉影は一人呟いた。目の前には複数の紙。
「そうやな…これは尚継はんが行くのがええやろな…尚継はんに上手いことやってもろうて、内から畠山を崩す」
凉影は狐のような目を更に細めた。
「外が駄目なら…内から攻めればええんやからな」