複雑・ファジー小説

Re: 僕と家族と愛情と ( No.37 )
日時: 2013/07/27 13:56
名前: ナル姫 (ID: 6em18rVH)
参照: http://p.tl/GWUO

正月の多すぎる行事が、一ヶ月掛けてやっと終わった。だが、定綱はまだ姿を見せない。
不振に思った政宗が使者を向かわせた所、『雪が多くて向かえない。桜の咲く頃には行けるであろう』と云う事で、政宗は兎に角、成実の怒りは頂点に達していた。
それでも成実の言う事を一蹴する政宗に腹が立ち、彼は一人馬に乗り、城下町や野原などを走り回っていた。

「あーッ!!糞ッ!!何で俺の話を聞かねぇんだか彼奴はッ!!」

そんなことを一人で言いながら無我夢中で馬を走らせる。着いた場所は金田城。

(…ここの城は彼奴の…)

堀の前で止まっていると、門が開いた。中からは女中が何人か出てきた。若い女性ならではの話をしながら買い物に出掛けたようだ。
行ってみるか。久しぶりの金田城だ。


門に近付く。瞬間、堀の前の門番達の顔色が変わった。

「し、成実様ッ…!?」
「何用にございまするか!?」
「久し振りだな、金田の!特に用と言う訳じゃねぇけど、まぁ散歩だよ。門開けてくれ」
「はいッ!!」

二人は、彼に『怯えている』と言っても過言ではない。成実はおおらかで優しい性格だが、一度戦場に出れは『武の成実』と称される程の猛将に豹変するのだ。それに、あの冷徹と言われる政宗の血縁。何をされるか分かったものではないだろう。
それは勿論、成実を『政宗の従兄』としてしか見ていない一部の人々の偏見に過ぎず、彼自信にとっては甚だ迷惑な話だ。まあ、慣れたことだが。

堀の上の橋を渡る。雪が沢山積もったその橋は、馬を歩かせる度にギシギシと音を立て、重いと訴えている様だ。

橋を渡りきり、城の門から中へ入った。適当に縁側から中へ上がり、哉人の部屋を探した。が、それまでに誰に見つからないわけがなく。

「「あ」」

蒼丸とバッタリ逢った。

「し、しししし成実様ッ…!?」
「よお蒼!久し振り!」
「いや話すのは久し振りですけど…何でここに!?」
「んー、家出?」
「ま、まさか出奔…!?」
「あ、いやそういう重いのじゃない!」

成実はここに至るまでの経緯を説明した。

「…」

結果的に唯の喧嘩か、そう思うと何と無く脱力させられる。蒼丸は、成実がここに来るまでの経緯を、苦笑いで聞いていた。

「って訳だから暫く此処にいていいか?」
「…父上がいいなら…」
「おう!有難う!」