複雑・ファジー小説

Re: 僕と家族と愛情と【人気キャラ投票!】 ( No.410 )
日時: 2013/07/11 14:37
名前: ナル姫 (ID: 2eNHBjew)  

「…さて、お義母様?」
「…何じゃ?」
「話は全て聞かせて頂きました。随分とお酷い事を為さるのですわね」
「世の中権力と美しさよ…今も昔もな。権力の大きなものが、最終的に成功するのじゃ」
「あら、本当にそうお考えで?」
「?」
「『生きる』のに必要なのは、本当に権力と美しさだけですの?」
「何が言いたい」
「それは間違っていると言いたいのです……必要なのは、心」

愛は自分の胸に手を当てる。

「必要なのは、信じる、考える、悲しむ、喜ぶ、楽しむ…愛する心です!」

愛の視線は真っ直ぐに、お東を貫かんとする程に鋭かった。
一度冷静になったお東の脳裏を、両目が健在だった頃の政宗が過る。

『——母上』

「だっ……黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「!!」

お東は目を見開き、懐刀を片手に持って愛に襲いかかった。成実も反応が素早く、蒼丸を横にすると自らの刀を抜いて対応する。鋭い金属音が響いた。

「成実様…」
「愛姫様!蒼を背負って西舘へ戻ってください!!」
「は、はい!」

成実はその姿が消えたのを確認すると、お東を屈させるための案を考え始めた。

(どうする…!?怪我はさせられねぇ、とは言えこのまま逃げるわけにも…)

チキチキと音を立て、刃は十の字に交じる。お東の力は相当強く、手加減をしているとは言え、彼の力と均等だった。
どうすればよいか分からないままただ腕に力を入れていると、突然フッとお東の力が弱まった。理由がどうであれ、好機とばかりに成実はお東を押し倒す。そして彼女の懐刀を奪い、遠くへ投げた。
お東の息は荒く、血走った目で成実を睨んでいた。どうやら、単に力が無くなったようだった。それを確信した成実は、口角を少し上げる。

「梵なら…負けてたかもしれませんけど、ね…」

それだけ言い残すと、刀を鞘に戻して立ち上がった。体力を使い果たし動けないお東に背を向け、彼は部屋から出た。そこにいたのは。

「……竺」

竺——幼少期、『竺丸』と名乗っていた政道だった。

「…私に、兄上と争う意思はない」

彼はそれだけ言うと、お東の部屋へと入っていった。成実はそれを見届けると、西舘へ歩き出した。


___



廊下を渡り終えようとしていたとき、彼はそこに幾つかの人影を見た。

「梵天丸、愛姫さ…愛ちゃんまで」

愛の腕には相変わらず気絶している蒼丸が抱かれていた。首筋をトンッと叩かれただけで、よくぞまぁ簡単に気絶するなぁなどと成実は考えていたが、当然かもしれない。
蒼丸が母親に会ったのは、そしてあれほどの怒りを見せたのはあれが初めてだったのだから。
政宗は少し寂しそうな瞳で蒼丸を見ていた。そして成実の方を向かずに口に出す。

「…成実」
「…あ?」
「…すまない」

泣き出しそうな瞳に、成実はやっと笑顔——とは言え苦笑いだが——を見せた。良いんだよ、と返す。

「蒼がさぁ、良く言ってくれたよ、あのお方にガツンとさ!」

言いながら、右手で拳を作り、何かを殴るような身ぶりを見せる成実。政宗が少し笑ったのを確認すると、愛から蒼丸を受け取った。

「寝かしてくるな」
「…あぁ…成実」
「ん?」
「二条と連絡がとれた……十日後辺り、来るだろう」
「お、小十郎上手くやったじゃん」

そうだな、と小さく政宗は呟いた。
過去、父親に言われたことを思い出しながら。


『お前は本当、良い部下に恵まれているよ』



___



「ううー…」
「まぁまぁ、そんな顔するなよ」

耳まで赤くした蒼丸は顔を布団に埋めた。まさか気絶させられるとは。年上とは言え、女子に。

「…で…」
「ん?」
「結局僕は、どうすれば…?」
「まだわかんねぇんだよ。まぁ多分同盟の話も無しになるだろうし…」
「……」

そして十日後——伊達の二条に対する言及が始まった——。