複雑・ファジー小説

Re: 僕と家族と愛情と【人気キャラ投票】 ( No.411 )
日時: 2013/07/16 20:49
名前: ナル姫 (ID: 9IMgnv4t)  

「か、堪忍してくだされ!!」

ガバッと相手は大の男でありながら頭を簡単に下げた。尚継の冷ややかな、小物を見るような視線が刺さる。
しかし案ずるより産むが易し、当初は自信のなかった尚継だったが、相手の冷や汗の量を見ると心に余裕ができ、普段の自分らしく相手を問い詰めることができた。
頭を下げっぱなしの相手に小さく溜息、二人が無言になり何とも言えない沈黙が流れる。

「…」

和典の話は何てこともない、ただただ単純な話だった。家臣が最上に媚びているのは事実。だがそれは、嘗て最上と二条が厚い同盟関係にあり、家臣同士での婚姻等が多く、最上家家臣の血を継ぐものが沢山居ることが要因であるらしい。また、お東や最上家の干渉に至っては、お東が絡んでいることは知らず、ただ最上に進められただけであると言う話であった。最上の話は、『彼処の当主の伊達政宗はできた男だ、またその弟は美しく、まだ妻がいない』と言う都合の良いものだったようだ。

「…兎に角、政宗様に話を流します……踊らされたことには同情しましょう」
「有り難き幸せ…!」

声も震えているし、目尻は光っていた。どうやら嘘はついていなさそうだ。


___



「下らない」

政宗は鼻で笑うことも出来ず、不快さに目を細くした。まぁまぁ、と普段たしなめる綾ですら、和典の出来の悪さには呆れたのか、政宗と同じ表情だった。

「しかし伯父上も巧いこと騙したものだ…思ってもいないことをよく並べられたな」

政宗は和典が持ってきた最上からの書状を見詰める。何度か伊達家を薦めたらしく、伊達家と婚姻関係を作るように書かれた文が数枚あった。

「…なぁ成実」
「あ?」
「母上は、その…彼奴を養子に出すために、伯父上に進言したのだよな?」
「あぁ」
「だがこの書状には、政道と結ぶように書かれてるな」
「そりゃあ、蒼だと不自然だからだろ。何で二人とも妻がいないのに次男じゃなくて三男なんだってなるしな」
「あ、そうか…」

書状に蒼丸の名は一文字たりともかかれてはなかった。その代わり、政宗に対する美辞麗句がものの見事に飾られている。お世辞にも程がある言の葉と、確実に騙すつもりであろう文面を見て、吐き気すら込み上げた。

「しかし危なかったなー。不自然さに気付かなかったら本当大変なことになってたぞ」
「そうじゃな」
「見事な洞察力、流石伊達の当主だな!」
「は?」
「え?」

不自然さに気付いたのは政宗ではなく蒼丸の筈だ。それをこの男はさも政宗が見抜いたかのように彼を誉めたが……政宗の反応がおかしい。それもその筈、見抜いたのは政宗ではなく蒼丸なのだ。
成実は常に蒼丸のことを気にかけているため、彼の言動をよく知っている。だが、蒼丸が不自然さに気付いたとき、その場に居合わせたのは政宗と小十郎のみ。政宗だって、他の家臣に『蒼丸が見抜いた』だのそんなことは言っていない。とどのつまり、蒼丸が見抜いたことを知っているのは政宗と小十郎だけなのだ。

「…その反応なんだよ」
「あ、いや…」

自分は気付いてないなど、恥ずかしくて言えない。……だが。

「もしかしてさ、気付いたの蒼?」
「……………な」
「え?」

見れば、政宗の顔からは血が引いており、両手の拳はぷるぷると震えていた。

「えーっと…梵天丸、まさか…図星…?」
「…どうでも良い事だけ…鋭くなるな!!」
「どぅわ!?そんな理不尽な!?」

政宗の拳は見事成実の顔面に命中。理不尽さを訴えながら涙目になった成実と、そんな従兄を無視する政宗に、尚継と綾は少しだけ笑みを残した。


___



「結局、僕はどうなるんでしょう?」
「二条の言い分だと本当に悪気は無さそうだし、裏で最上が操ってただけらしいんだよな」
「はぁ…」
「流石に可哀想だし、このままじゃ滅亡しちゃう二条に条件を出して同盟を組むらしい」
「条件?どんなですか?」
「…それはな」