複雑・ファジー小説
- Re: 僕と家族と愛情と【人気キャラ投票】 ( No.413 )
- 日時: 2013/08/19 17:36
- 名前: ナル姫 (ID: 6em18rVH)
——同時刻、睦草家の館——。
「まぁ、尚継が!?」
「えぇ、政宗様も尚継の才能を誉めていらっしゃいましたよ」
「御光栄に御座いますわ。あの子にも見習って欲しいものです…」
「あぁ、当主の弟の息子さん、ですね」
「はい。尚継の従弟に当たるんですけどね…その子の父に似て腕っ節勝負の子で」
「成る程…今時珍しいですね」
小十郎と話していたのは、睦草家当主伊継の正室、お雪。そんな二人の会話を聞いていた少年は、小さく小さく舌打ちをした。
「…けっ」
___
違うだろうと思っていた答えが正解だと肯定されたとき、人が取る行動は何だろう。放心か、嬉しさの余り泣くか、肯定した人物や物を疑うのもありかもしれない。
そんな状況に立たされたこの少年は一番最初の行動を取ったが。
「…えっ…?」
不機嫌そうな当主を前に、少年はただ目をぱちくりさせるのみ。その横では彼の従兄に当たる青年がぷるぷると笑うのをこらえていた。
「いやいやいやいや!?え?何言ってんですか!?」
「だから、お前を伊達家の家臣に取り立てると言ったのじゃ。家臣も数人付けるし、定行にはお前の家臣の筆頭として他の奴を纏めて貰う」
政宗の言葉を聞いてなおポカンと口を開けている。呆けた顔が勘に障ったのか、分かったらとっとと出ていけと成実と共に追い出されたが、その後も成実は上機嫌だった。
「…御機嫌ですね」
「ん?まぁな!」
今思えば、成実は自分が悲しいときも一緒に悲しんでくれて、悩んでいるときは一緒に悩んでくれて、嬉しいときは一緒に喜んでくれている気がする。ここまで親身になってくれる上司など、他にいるだろうか。
「多分梵天丸、嬉しかったんだと思う」
「え?」
「竺…あぁ政道の事な。あいつはお東様の味方、梵は怖くて逆らえない。俺は身分があるし…そんな中、お前は本来なら身分も正当、それで、お東様が興奮する様な事を言ってやった」
成実は蒼丸を見て、ニッと口角を上げて見せた。
「それが、彼奴は嬉しかったんだよ」
——思えば。
最初は何も知らない自分を睨み付ける様な人だった。それが、小十郎の小姓になることを許し、帯刀を認め——今では、家臣として取り立てている。その時、やっと家臣であると言う実感が湧いた。
「さて、婚儀は近いぜ。衣装合わせなんかは前やったんだよな?」
「はい」
「じゃあ後は礼法とかだな。俺はその辺良く分からねぇから定行なんかに聞いてくれ。多分明日には米沢に来るから」
成実はそれだけ言い残すと、どこかへ走り去ってしまった。一人残された蒼丸は、自室に戻ろうと足を進め——その時。
「うわっ!?」
「お!?」
前から来た誰かにぶつかり、尻餅をつく。どうやら相手も同じらしい。
「いったた…すみません、余所見してて」
「あ、いや…キョロキョロとしてた俺も悪かったよ。大丈夫か?」
そこにいたのは蒼丸より二つか三つ年上の少年だった。……見たことがない顔の筈だが、何故だろう、その目元辺りをどこかで見たような気がするのは。少々の間凝視してると、不快そうに目を細められた。
「何だよ?」
「あ、いえ、何でもないです…」
「…まぁ良い。あ、そうだお前、政宗様の部屋何処だか分かるか?迷っちまってさ」
「あぁ、それなら此方です。案内しますね」
蒼丸は薄く微笑みながら少年を案内したが——如何せん先程追い出されたばかりで、足取りは少し重かった。
___
部屋の前につくと、少年は方膝をつき、礼儀正しく入室の許可をとった。
「お召しにより、浜継参りました」
(浜継さんか…)
そんなことを考えていると、政宗の入れと言う声。浜継は襖を開け、これまた礼儀正しく部屋に入る。入るべきかどうか迷っていると、浜継と名乗る少年が手招きしたので、一応入った。