複雑・ファジー小説
- Re: 僕と家族と愛情と【人気キャラ投票】 ( No.423 )
- 日時: 2013/07/29 21:36
- 名前: ナル姫 (ID: MK64GlZa)
輝宗の死後、二本松を攻めている間、佐竹は伊達を攻め始めようとしていた。結果、戦にはならなかったものの、攻め込まれたら負けていたでろう戦であった。
佐竹、蘆名は伊達家の好敵手であり、南奥州の勢力を二分するものである。好敵手とはいえ、領土の小さい伊達では戦をしても敗北は見えていたため、中々戦などしていない。
「はぁぁぁ…」
相馬に奪われていた土地は政宗が家督を継ぐ前に取り戻された。だが二大勢力の蘆名に佐竹、それに周辺の小大名達が伊達を潰そうと旗を挙げたら……と考えると、憂鬱なんて感情で済むもんではない。
「お気持ちはお察しいたしますが…今は戦に溜息を漏らしている暇もないでしょう」
「せやな。今は蒼君の御結婚をお楽しみなされや」
二人の微笑んだ顔に政宗は少しキョトンとして、その後、少しだけ頬を綻ばせた。
だがいずれにせよ、戦が迫っているのは確かである。結婚と共に、戦の支度もしなくてはならないのは明らかなことだった。
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「浜継ー」
朗らかな青年の声に、少年はあからさまに顔をしかめた。
「…何の用だよ」
「いや、蒼丸君の部下になったって聞いたから」
「うっせぇな!!だから何だよ!!」
「何だよって様子を見に来たんだよ」
「テメェに心配されるとか心外だね!!テメェこそ政宗様にちゃんと仕えてんのかよお気楽天然ドジ野郎!!大した用でもねぇのに俺の前に現れんな!!」
言い切ると同時にスパンッと勢い良く襖を閉めらる。尚継は困った奴だ、と言うように肩を竦めた。
「相も変わらず犬猿の仲ですねぇ」
「あ…片倉様」
「…まぁ尚継は浜継を嫌ってませんから、犬猿とは違いますか」
「気性が荒々しくて本当…大丈夫でしょうか」
「大丈夫ですよ」
溜息を漏らしながら小十郎は続けた。
「浜継もああ見えて…貴方を敬っている筈です」
雪は一層酷くなり、寒さはどんどん増していく。
騒がしく、慌ただしく……それでいて、何処か不穏な空気を纏いながら——伊達家は新年を迎えることとなる。
——1585(天正13)年、四国では長曽我部元親が四国をほぼ統一するも、その後数週間で秀吉の四国征伐が始まった。長曽我部は果敢に戦うも、秀吉の大群を前に降伏、手に残ったのは土佐(現在の高知県)のみとなる。九州はまさに島津によって制圧されようとしていた時、惣無事令による九州征伐も始まった。更に、信長の死後平姓を使っていた秀吉だが、今年の終わり頃から藤原姓を名乗っていた。
小手森の落城により政宗が頭角を現した年は、秀吉が躍進を遂げた年だった——。
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雪の降る一月の中旬、蒼丸と二条家の一人娘、紅姫との婚儀が行われた。
「二条和典が娘、紅でございます」
「ようこそいらっしゃいました、紅姫!」
蒼丸の僅かに紅潮した頬は、紅の顔が見えた瞬間もっと赤くなった。姫君の外見にやられたのか、緊張なのかは誰にも分からなかったが。
二人が顔を合わせれば後はお祭り騒ぎで、宴会は賑やかなものとなった。
「光は妹ではなく、正室ですっ…!」
唐突に聞こえた泣き声の方に目を向ければ、成実が光を慰めており、紅は混乱していた。蒼丸は紅に色々説明しているようだ。
「賑やかな婚儀になったなぁ」
「騒がしいったらありゃしないわ」
政宗が軽く目を伏せた横で、ニコニコと常隆が笑っていた。
「しかし、今回の事に何も関与していない岩城が招かれるとは幸いだな」
「呼ぶところないしな」
「…で…保春院(お東)様は?」
「…保留じゃ」
「…そうか…」
手に持った杯に入っている酒に、曖昧な表情が映る。
「って、暗くして悪かった。まぁ、なんだ。今日こうして呼ばれたのも何かの縁だろう。こちらからも土産話は用意しているから、楽しみにしとけ?」
「…は?」
何じゃそれは、と問う声に、まぁそれはまた後で、と常隆は楽しそうに言った。