複雑・ファジー小説
- Re: 僕と家族と愛情と【人気キャラ投票】 ( No.444 )
- 日時: 2013/08/11 22:31
- 名前: ナル姫 (ID: 9IMgnv4t)
二人がいる座敷牢に、面白がって入る人が何人かいる。
一人目、和泉凉影。第一印象は明るく、関西の方の言葉を操る。また性格はお調子者と言った感じで、見た目はまるで狐だ。家来としての役割は策士。
二人目、睦草尚継。いつもヘラヘラとしていて、雰囲気はどことなく凉影に似ている。黒髪の少年の館にいた浜継と言う目付きの悪い少年の従兄。役割は尋問など。
三人目、片倉小十郎。真面目そうに見えるが社交的でお気楽。まぁやるときはやるのだろう。当主政宗の右目であり、彼の教育等を担っていた重要人物。一応策士だが、凉影達に任せている模様。
……入っては来ないが、気になっているような人は大勢いる。
その中でも目立つのが、竹葉佳孝。まだ少年ながら当主に仕え、初陣では中々良い成績を残したらしい。一方で頭は弱く、犬呼ばわりもされている。
そして今日、二人は新たな人に出会う。
「良いじゃねぇか!気になる気になる!」
「お前な…」
聞き覚えのない明るい声に二人が反応する。襖を開けて現れたのは濃い茶髪を一つに纏めた青年だった。
「おーお前らか金銀兄弟!」
「き…金銀兄弟…?」
「え、だって金の白金と銀の白銀だろ?」
「え、あぁ、はい…」
「じゃぁ金銀兄弟!異論は認めねぇ!」
ハッハッハと豪快に笑う名前も分からない人物に戸惑っていると、その人の体が急に横に吹っ飛んだ。そして少し後、奇声と何かにぶつかるような音が響く。
「お前は…まだ警戒が必要な奴に易々と…」
右手に作られた拳を見る限り、政宗が成実を殴り飛ばしたのは間違いなさそうだったが、政宗が格闘技に関して言えば意外と力があると知らない人物から見れば、あの細い腕で成実を殴り飛ばすなど信じられないだろう。
「えーでも結構入ってるだろ?凉影とか尚継あたり」
「彼奴等は軽く蹴り飛ばした」
「軽い蹴りならまだ優しいな」
「池に」
「鬼!!」
笑って良いのか悪いのかの状況下、二人は取敢えず政宗達の遣り取りを聞いていた。
「そう言えばお前名乗ったか?」
「あ、名乗ってねぇ」
「馬鹿。はよ名乗れ」
「馬鹿って…えーっと、俺の名は伊達成実!梵天丸…あ、政宗の従兄、兼幼馴染み、兼重臣、兼殴られ役みたいな感じで、大森城の城主だ。宜しくな」
殴られ役と言うところはきっと気にしたらいけないのだろうと二人の思考が一致した。
「まー梵も見た目と違ってやたら怖いし強いし怖いしとかそんな印象だと思うけど、甘いの大好きで幽霊が苦手とかそういう部分もあるから仲良くしてブホゥ!!?」
再び顔面に直撃した拳は先程の拳より痛そうだったが、政宗は顔を耳まで赤くしており、成実から提供された情報によって、いくらか政宗に親近感が湧く。
痛そうに顔面を押さえる成実の横で溜め息。ぎいっと睨み付けられると、やはりまだ肩がすくむ。
「…観察はあと二日だ。尻尾を出すなら今のうちだからな」
吐き捨てるように言うと、行くぞ成実と言って何処かへ行ってしまった。成実は軽く返事をした後、二人にじゃぁなと笑って政宗の後を追って行く。
見たところによると、成実と言う人物は大きく当主の信頼を得ている様だったし、何より仲が良かった。だが二人は五日間大人しくしていても未だに睨まれ、警戒される。兎に角、信用がどうこうとか警戒がどうこうとかではなく、ただ単に政宗が二人を一方的に嫌っているのは確かだった……思い当たる節がないと言えば嘘になるのも、確かだった。
___
二月の中旬。蒼丸の誕生日も過ぎ、祝いの雰囲気もすっかり収まってきたところで家臣の動きが本格的に慌ただしくなってきた。黒脛巾から寄せられる情報は聞けば聞くほど絶望的になり、勝つ可能性を見失う。
そして——少年は、何となく予測し始めていた。今回の戦には、自分も出るのだろうと。
——その戦は、最悪の戦なのだろうと。