複雑・ファジー小説
- Re: 僕と家族と愛情と【人気キャラ投票】 ( No.445 )
- 日時: 2013/08/13 20:51
- 名前: ナル姫 (ID: 7foclzLM)
二日後。
「おい」
襖が開き、降り掛かる冷たい声。二人は金色の瞳と青の瞳を各々開き、声の主に目をやった。
「お前達の軟禁は解く。見た所話にあった通り間者の気配等もないしな…伊達家に仕えろ」
「はっ!!」
二人は同時に頭を下げる。
「政宗様、従者になるに辺り、烏滸がましくも願いがございます」
頭を下げたまま、白金が口を開く。政宗はニ、三度瞬きをし、願い?と復唱した。政宗の傍に付いている小十郎は、何かを確信しているかのような顔をしていた。
「是非、あのお方…我々を家臣に取り立てようとした、あのお方に仕えさせてください!」
兄に続き弟が言う。名前を教えていなかったなと今更ながら政宗は思い出した。小十郎は、やっぱりと言う様に肩を竦めて目を細めた。
「構わんぞ。彼奴も嫌がりはしまい」
「それと、あの子の名は蒼丸…主人の名、確と覚えなさい」
小十郎が優しい声で言うと、再び二人は勇ましい返事をした。
「そうと決まれば連れていくが…その前に一つ聞かせろ」
「はぁ」
「伊達は今、戦の支度をしている。それも規模の大きいな」
「その様ですね…随分皆さん忙しないですし」
それがどうかしたのか、と言いたげな瞳を見て、政宗は単刀直入に聞くことにした。
「戦には、貴様らの養家や生家の人間も出るだろう。その人間に会ったとき、貴様らは親を斬る覚悟はあるか」
自分達を捨てた親、それでも、産んでくれた、育て上げてくれた親。
「あるなら戦に出ろ。ないなら出るな」
分かっている。今、無駄な情は不要。これから仕える伊達家で戦功をあげていきたいのなら戦わなければいけない。斬らなければいけない。喩えそれが、血の繋がった家族でも。
迷う二人の心に、浮かんでは消える家族の顔。そして——主となる、幼い少年の笑顔。
二人は覚悟を決め、政宗の隻眼を見つめる。そして同時に言った。
「あります」
瞳に迷いがないことを確かめると、政宗は踵を返して何処かへ歩き出した。
「…早速仕事をしてもらおうか。付いてこい」
着いたのは鎧の置いてある部屋で、一つ木箱が置いてある。
「銀の方、その箱を持て」
「はい」
「金の方はこの槍だ」
「はい」
白金は無造作に投げられた槍を少し落としそうになるが、何とか受け止めた。
「お前ら、戦は未経験か?」
「?はい」
「ならお前らの槍と甲冑も作っておこう。それまでは城の備品で我慢しとけ……行くか」
___
パッと顔が輝いた。弟の方は笑って、兄の方は少し照れているような顔をしている。
「本当に、本当に良いんですか!?」
「こいつらの希望だ」
まさか本人達が自分の部下になりたがるとは夢にも見ていなかったのだろう。少年はどこまでも嬉しそうだった。
「宜しくね、えっと…」
「…風迅白金、です」
「ぎははは!金兄、そうじゃねぇって!俺達二人ともシロガネだから呼び方迷ってんだよ!」
「何、だと…!?」
「そうですよね、ご主人様?」
「うん、まぁ…」
「俺は白に銀だから、銀って呼んで下さい。金兄は白に金だから金で」
政宗の前では彼の威圧で調子を狂わせていたが、二人の元の性はこう言う物の様だ。
「…銀の方」
「あ、はい!」
「箱は確と定行に渡したな?」
「はい!」
「なら、本格的に戦仕度を始めるか」
呟いた政宗に、蒼丸が心配そうな顔をした。
「…政宗様!」
「?」
「勝って下さいね!」
「は?何他人事の様に言っておる」
「へ?」
不快そうに蒼丸を見た政宗の左手に、小十郎がそっと槍を渡した。それを政宗は少年に渡す。
「貴様も出るのだぞ」
少年の顔が唖然とする。少しだけ時が止まった様に感じられたが、直ぐに。
「——はいっ!!」
少年の顔は希望に輝いていた。