複雑・ファジー小説
- Re: 僕と家族と愛情と ( No.49 )
- 日時: 2013/07/27 14:44
- 名前: ナル姫 (ID: 6em18rVH)
- 参照: http://p.tl/7c8A
「気ぃ使わなくて良いぞ?」
「いえ…御客様ですし、目上の人ですから」
哉人に此処に暫く置いて貰う様に頼み、それが通った成実は蒼丸の部屋にいた。蒼丸は成実に茶を出している。成実は悪ぃなぁと言いながら笑顔で茶を貰った。
「あーあー蒼丸は彼奴とは大違いだ!」
「…政宗様…ですか?」
「おう」
「…でも、嫌いじゃないですよね?」
いきなりの問いに少し戸惑った成実だが、直ぐに苦笑いして頷いた。
「嫌いだったら餓鬼の頃から出奔してるわ俺」
豪快に笑う成実それに蒼丸は苦笑で返す。成実はいい人だ。蒼丸の中の成実は話しやすくて楽しい人。小さい頃からよく話していた蒼丸は、成実にとってよい理解者なのだ。
会話が無くなった。気まずい雰囲気が流れる。蒼丸は何とかして話そうとして、頭の中で必死になって会話を探す。決してその焦りは顔に出さない。焦りが顔に出て子供扱いされるのはごめんだ。
「…どうした?」
「ふぇ!?」
「や、何か焦ってるから」
蒼丸はポカンとした、と言うよりは驚いた。焦りが顔に出ていただろうか?いや、考えられない。
「何で、ばれて…」
「俺に嘘なんざ通用しねぇぜ?」
ニッと不適に笑うのを見て、悔しさを感じる。
成実がクスッと笑うと、蒼丸は顔を真っ赤にして俯いた。瞬間、成実の顔が少し真面目になるが、下を向いている蒼丸にはそれがえない。
(やっぱり血縁だな…蒼。焦りを隠す顔が同じだ…『彼奴』と)
「まあ俺の前では嘘つかねぇこったな」
「うぅ…嘘ついたつもりはないんです…」
「…焦りを見せると餓鬼らしいから真顔でいるようにした、か?」
「何で解るんですか!?」
「アッハハハハハ!おもしれぇなあ蒼!」
成実は、もう恥ずかしくて堪らないと言うような蒼丸の顔を見てまた豪快に笑った。
やがて成実は、笑ったせいで目に溜まった涙を指で掬った。それを見た蒼丸が、半分無意識に成実に訊いた。
「…政宗様は…僕の事嫌いなんでしょうか…?」
いきなり言われた事に驚き目を見開く成実。それを見た蒼丸がハッとして謝る。
「あ、す、すいません!下らないこと訊いてしまって…」
「下らなくねぇよ」
「え…」
蒼丸は驚いて顔を上げた。何でそう思ったか、話してくれねぇか?静かに話す成実は、蒼丸が知っている明るい成実とは遠く掛け離れていた。緊張した顔つきのまま、蒼丸は頷いた。