複雑・ファジー小説
- Re: 僕と家族と愛情と ( No.50 )
- 日時: 2013/07/27 14:46
- 名前: ナル姫 (ID: 6em18rVH)
- 参照: http://p.tl/4f7Z
家督相続式の時の睨む様なあの目—…。あれは一体なんだったのか。
「十一月に、家督相続式がありましたよね?」
「あぁ」
「あの時、一瞬政宗様と目が合って…睨まれたんです」
「睨まれた?」
復唱する成実。返事の代わりに頷いた蒼丸の顔はだんだん暗くなっていった。その心模様を示すように、空も雲で灰色に染まり、雪も多くなってきている。
成実の額に、微かに冷や汗が流れたが、蒼丸は気づいていない。
(…ばれるかもな)
「…わかんねぇや、御免な。…俺はもう帰るけど、またちょくちょく来るから」
「成実様…」
何て優しい人なんだろう。そう蒼丸は感動していたが、成実がそう言ったのは慈悲ではない。只の、上司としての社交辞令と、逃げたいと言う気持ちから勝手に出てきた言葉だ。
「じゃあな、蒼」
「はい、送っていきます」
「良いよ、外寒いだろ?」
「しかし…」
「良いって。しつこい男は嫌がられるぜ?」
フッと不敵な笑いを返せば、蒼丸の頬が茹で上がる。
「…分かりました」
「ハハハ、良い子だな」
部屋の襖を閉め、廊下に出た成実は早歩きで哉人の部屋へ向かった。
___
(成実様…格好良かった。顔なんかは政宗様の方がずっと綺麗だけど、成実様は人としてとても美しかったなぁ…)
自然に綻ぶ蒼丸の頬。ニヤニヤしていると、いきなり襖が開いた。居たのは定行。
「さッさだ…!?」
「…何ニヤニヤしていらっしゃるのですか」
「ち、違くて!只成実様が格好良くて…!!てゆうか入るときは言ってくれって何度もッ!」
「申し訳ございません…それよりまさか蒼丸様男色を…!?」
「そういうのじゃない!!」
定行は知ってますよと笑う。蒼丸はとても赤くなってしまったその頬を両手で押さえて、定行を少し睨んだのだった。
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一方、成実—…。
「哉人、良いか?」
成実は哉人の部屋の前で小さく言った。音もなく襖は開き、中から哉人が出てくる。
「成実様、貴方は私なぞに許可を取る必要は…」
「必要、の話だろ?確かに必要は無いけど、許可取らなきゃ俺が落ち着かないんだ」
薄く笑う成実。哉人は少し戸惑い、成実にお辞儀をして中に招き入れた。
「して、成実様。何用にございまするか?まさか蒼丸が失礼な事を…」
「蒼に限ってそんな事有り得ないのは哉人が一番知ってるだろ?」
ニッと笑えば、哉人は照れた様に頭を掻いた。
「では、一体何が…」
「…『あの事』がばれるかもしれない」
「え!?」
「梵天丸…政宗が蒼を睨んだそうだ」
「しかしそれだけではッ…」
「分からねぇよ…蒼、頭良いからな」
「…」
「兎に角、ばれないように振る舞ってくれるか?」「はい、無論…政宗様と…
蒼丸『様』の為に…」