複雑・ファジー小説

Re: 僕と家族と愛情と【イラストに描くキャラ投票開催中】 ( No.56 )
日時: 2013/07/27 14:47
名前: ナル姫 (ID: 6em18rVH)
参照: http://p.tl/BW0Q

「何じゃ、戻ってきたのか?」

多分態とであろうが心底残念そうな顔をする政宗。悪いのかよと返すのはさっき少々の家出をした成実。

「帰ってこずとも良かった物を」
「お前一回本気で殴るからな…」
「やってみろ。出来るものならな」

フ、と不敵に笑うその顔はきっと演技ではなく、本心だという事が分かる。こんな時代だが、出奔してやるとか、戻ってこなくて良いのにとか、そんな冗談も笑い飛ばせる良い主従であり、血縁なのだ。

「で、まあそれはどうでも良いんだよ梵天丸!」
「?」

顔が、何?と語っている。成実は真剣そのもの。何時もふざけている成実なのに。頭でも打ったか?とか思ったが面倒になりそうなので言うのを止めた政宗。

「蒼にあの事がばれそうなんだよ」
「戯れ言を」
「いやいや!戯れ言って言ってられねぇって!」
「ばれたりする物か。哉人が何とか言うであろう?」
「そ…そーかぁ?」

浮かない返事をする従者を口を尖らせて睨んでみれば、頭をポリポリと掻いて分かったよと返す成実。
何を考えているんだ俺は。元々自分の意見を突き通す政宗には何を言っても無駄だ。そんな成実の心境を読み取ったのか、政宗は悪かったな、と舌を出した。

「…して成実」
「ん?」
「貴様いつまで米沢にいるつもりじゃ?大森城城主のくせして…」

成実は最初真顔だったが、段々政宗の言いたい事が分かり、ダラダラと汗が流れた。

「まだ引き摺ってんのか…?」
「何故儂より年下の貴様が儂より先に家督を継いだのじゃ…」
「仕方ねぇだろ!?親父もう五十歳過ぎなんだから!!」

成実は政宗が伊達家を継ぐ一年前に、大森城を継いだ。しかしそれは彼が今言ったように、彼の父の伊達実元がもう五十歳を過ぎていた為である。だが政宗はどうにも納得いかず、あれからずっと何かにつけてチクチクと言ってくるのだ。

「納得などできるものか」
「誰かこいつの唯我独尊何とかしてくれ〜」

茶化した口調で言えば政宗の青筋が少し見えたので、成実が即座にゴメンと言ったのは別の話。


___



あれから十日程経った。二月十五日。蒼丸は十三歳になった。重臣の金田家の嫡男の誕生日だ。米沢城でそれは祝われた。

「蒼丸様、お誕生日本当におめでとうございます」
「…!あ、有り難う定行!」

朝、蒼丸は起きてから最初に定行にそう言われたため驚いたが、その後は顔を赤らめながらお礼を言った。

「さ、早くお着替えください。米沢に向かわなくては」
「うん」

蒼丸は寝巻きを脱いで正装した。
彼の名に相応しい、蒼色の着物。
主がそれを嫌うとも知らずに。