複雑・ファジー小説

Re: 僕と家族と愛情と【コメが…欲しいのです…】 ( No.60 )
日時: 2013/07/27 14:49
名前: ナル姫 (ID: 6em18rVH)
参照: http://p.tl/SoiD

約二刻(四時間)後、巳の刻(午前十時頃)を過ぎた。昨日の夜から降っていた雪はいつの間にか止み、空は青く晴れていた。
米沢の門の前に、金田の一行は着いた。そこには同じ位に着いた成実の一行もいる。成実は見事に飾られた馬に乗っている。それに比べて蒼丸は籠の中だ。何だか子供臭い。

「おー哉人じゃん。こんにちは…じゃ早いか?おはようだな」

成実は笑う。

「成実様、おはようございます」
「そしてその籠の中には…?」

蒼丸は籠の中から顔を覗かせた。

「よぉ蒼!」
「おはようございます」
「立派に着飾っちゃってなぁお前!」

成実は籠の中にわずかに見える蒼丸の服を見て言った。

「もう…からかわないでくださいよぉ成実様…」

ニヤニヤする成実に、蒼丸は真っ赤になった。成実が言うほど着飾っているわけではないが、実はお洒落には縁の無い蒼丸なだけに、綺麗な服を着ると云うのは珍しいのだ。

「ま、兎に角中入ろうぜ。彼奴気が短いからな」
「はい」

門番が門を開けた。堀の上に架かる橋の上を通って、米沢城へと彼等は入っていった。


___



中に入ると、もう殆どの家臣は着いていた事が分かった。

「俺、梵天丸のとこ行ってくるから、金田が到着した事も言っておくな」
「え!?そんな悪いですし…」
「良いって。蒼、ちゃんと服に埃付いてないこと確認しろよ?」

蒼丸は緊張した顔つきで頷いた。毎年やってるってのに。成実はクスクス笑いながら政宗の部屋へ向かった。

「梵天丸?入るぜ?」
「…」
「?梵天丸?」

返事がない。だが気配は感じる。開けても問題ないだろう。
…この野郎、寝てやがる。政宗は左腕で頬杖をついて気持ち良さそうに寝ていた。服は流石、黒生地に白い竜の模様の入った可憐な衣装に身を包み、袴や上着と合わせることでそれを完璧に着こなしている。
成実は溜め息をつきながら政宗の方まで歩いていく。そして、パンッと頭を叩いた。瞬間、政宗はハッと顔を上げ、辺りをキョロキョロ見回した。

「おはようございます。十分睡眠できましたか?」
「何じゃ成実か…小十郎かと思うたわ…」

政宗は荒く髪を掻いた。

「んな事すっと折角の綺麗な髪が台無しだぜ?」
「世辞はいらん」

世辞なもんかと苦笑を漏らすと、少しキョトンとした顔を見せた。軈て、何事もなかったかのように政宗は大広間へと歩き出す。成実は心の中で照れんなよと思いながら、その背を追った。
途中、歩きながら政宗は空を見た。
その空は、彼の目には灰色に映った。