複雑・ファジー小説

Re: 僕と家族と愛情と【コメが…欲しいのです…】 ( No.61 )
日時: 2013/07/27 14:52
名前: ナル姫 (ID: 6em18rVH)
参照: http://p.tl/aJpd

「……ですので、その、えっと…」

蒼丸は伊達家家臣全員の前で挨拶をしていたが、どうにも格好がつかない。顔は真っ赤だし、言葉は一々つっかえるし、言っていることも支離滅裂という恥ずかしい状態。
成実は笑いを堪えようと頑張るが、どうしてもバレてしまう。政宗は退屈そうで、輝宗、哉人、定行に至っては温かい目で見守る始末。

「あ、ありがとうございました…」

ガチガチになりながらぎこちなくお辞儀をした蒼丸の服は汗で濡れていた。よく頑張りましたの意味合いで拍手が送られるも、それすら蒼丸の心に圧迫を掛ける。

「あーあー蒼…ガッチガチになっちゃってな」

可笑しそうに成実が政宗に話しかけると、政宗も肩を竦めて溜息を漏らした。

「次に当主、伊達政宗公より祝いを申し上げます」

小十郎が持ち前の良く通る声で目次を読み上げる。それを聞いた政宗が立ち上がり、家臣の前に座った。

「…私より祝い…と申し上げましても、本日の主役は違いましょう?」

ニコッと笑った政宗を、蒼丸は驚いて見つめた。そして、作り笑いだと思った。人形みたいだ。そんなことを思っていると、政宗が不思議そうに蒼丸を見る。

「あ、何でもありません…」

首を傾げたが、そのまま政宗は色々続けた。そして最後に言った言葉に、蒼丸は衝撃を受ける。

「蒼丸殿はもう十三…そろそろ嫁を貰っても可笑しくない歳でございます故、そのことについても考えております」

大きすぎる衝撃。え?僕が?嫁?貰うの?
まるで石像の様に固まってしまった蒼丸を余所に、政宗は話を纏めて蒼丸に祝いを言って、自分の席に戻った。

その後も蒼丸の頭の中は政宗の宣言の事で一杯で、舞子の踊りを楽しむ余裕さえなかった。定行はなんとかして蒼丸の混乱を解こうとしたが、どうにも無理で、最終的には諦めた。




金田城に戻り、掛布に顔を埋めていると、嘉那が入ってきた。

「あらあら蒼丸様ったら、可笑しなお顔」

クスクス笑う嘉那を軽く睨むが、効かなかった。

「お嫁さんを貰う話があるんですってねぇ」
「耳が早いな…」
「ふふふ。まぁ大丈夫ですよ。今話したって結局はもう二年くらい間がありますから」

優しく微笑む自分の乳母。なら大丈夫かな、とか思っていたら彼女が言うほど間は開かず、蒼丸が結婚することになったのはもっと後の話。