複雑・ファジー小説

Re: 僕と家族と愛情と【イラストうp!】 ( No.74 )
日時: 2013/07/31 14:25
名前: ナル姫 (ID: 6em18rVH)
参照: http://p.tl/20Wa

軍議が終わった後になって、家老が戦に反対する意向を示した。

「政宗様ッお待ちください!!」
「我々の話を!!何卒ッ」
「今この状況下、大内と戦など無謀でございます!」
「何卒、再度のお考え直しをッ!!」
「五月蝿い。従え」
「政宗様ッ!」

すたすたと歩く政宗の背を家老は追うが、その間に、政宗の右側にいた小十郎が立ち塞がった。

「政宗様はもう決意なさいました。従いなさい」

穏やかな言い方だが、右手は左腰の、刀の柄に伸びている。従わなければ斬る…目がそう語っていた。それには流石の家老達も、黙っているしかなかった。
だが、それを見ていた哉人が口を出す。

「…されば、政宗様」
「?」
「輝宗様に御意見を伺っては如何でしょう?」

政宗は意表を突かれ、少し狼狽えた。困った様に小十郎を見れば、彼は肩を竦めていた。哉人の意見が正しいかと…そう語る行動に溜息をつく。

「…一度だけだぞ」

口を尖らせてそっぽを向く政宗に、家臣達は安心しつつも苦笑を漏らした。

「…それと、哉人、話がある」
「は」

政宗は哉人をつれて自室へ向かった。小十郎も付いてきた。

「…父上がこの戦、許すのならば、貴様に頼みたい仕事がある」
「…とは?」

真っ直ぐ、政宗を射抜く様な瞳を向ければ、政宗は不敵に笑った。

「分かっておるのだな」
「大体は」
「…ならば、頼んだぞ」

話は終わったようだ、と哉人は米沢にある自室に戻ろうとした。それを政宗が思い出したように、待て、と引き止める。

「?何か…?」
「…いや……何でもない」
「?何です?」
「何でもないと言っておろう!早よう行け!」

仕方の無い御方だ…苦笑を漏らして素直にはい、と返事をする。一礼をして部屋を出た。


「政宗様、哉人を殺す気ですか?」
「…」
「…金田の全権掌握…姉上もその為に使われたものと存じまするが」
「使われたとは…随分、人聞きの悪いことを言うな、小十郎」
「違いますか?」

政宗は黙った。政宗が哉人に任せた仕事は、殿(シンガリ:退却する軍隊の最後尾にあって,敵の追撃に備えること)だ。死ぬ確率が高い。完璧に成功させた前例は羽柴(後の豊臣)秀吉くらいだろう。

「金田は有力家臣…ですが、哉人は貴方に色々指図をして煩わしい…そうではないですか?」

政宗は黙秘を貫く。何時もと変わらない無表情で、興味なさそうに話を聞いていた。もっとも、興味がなさそう、と言うのは表面上。実際は小十郎に心中を読まれ、何も言えなくなっていたのである。

「まあ…貴方様がそれで宜しいならば、反論は致しません」
「先程のは反論ではないのか」
「あれは飽くまで私の意見ですよ」
「…」

嘘をつけ、とでも言いたそうな政宗ににっこりと笑みを返し、小十郎は部屋を出た。

出発は明日。ぶつかるのは、きっと三日後くらいか。
哉人に訊こうとしたことを、頭の中で繰り返す。


後継者を選べ、哉人。


養子か、実の子か。



→正体出ませんでした…
あ、あと二話!お待ちくださいィィィッ(。´Д⊂)