複雑・ファジー小説
- Re: 僕と家族と愛情と【イラストうp!】 ( No.77 )
- 日時: 2013/08/04 14:38
- 名前: ナル姫 (ID: 6em18rVH)
- 参照: http://p.tl/DcZY
太陽の下、駆ける馬が一頭。定行と蒼丸は今、米沢に急いでいた。先程届いた、哉人戦死の報告。それが信じられない蒼丸を宥めることも出来ずに、米沢へ向かっているのである。
暫くして米沢に着いた。だが門番は中々開けてくれない。
「何でだよ!!入れてくれよ!!」
「今はなりません!!」
「僕は哉人の子、蒼丸だぞ!!」
「なりません!!」
「蒼丸様…」
「ッ…!!」
___
真っ暗だ。
何も見えない。
…此処は?
『ねぇ、新しくお生まれになった子、何てお名前になったの?』
『えっと確か…色の名前が入ってたけれど』
『色?梵天丸、竺丸と来て、色?』
『あぁそうだ、確か、生まれた日の空の色に因んで…』
『蒼丸』
—アオマル?
『まぁ、良い名前じゃない』
『ね!』
『家督は竺丸様か蒼丸様かしらね』
—どうして僕は入っていないの?
僕の事が嫌いだから?
僕が片目だから?
ミンナ、アンナニボクヲホメテタノニ?
どうして。どうして。どうしてどうしてどうしてどうして。
蒼いもんか。
ただの灰色じゃないか。
綺麗なんてあるもんか。
…要らない。
皆にとって、僕は…。
僕なんて要らない。
…違う…?
コンナノボクジャナイ!!
死んでしまえば良い!!死ね!!死ね!!死ね!!死ね!!
そして返せ!!
『本当の僕を返せ!!!』
「——ッ!!」
湿った空気の漂う部屋の中で、政宗は目を覚ました。横には、夢の世界へ旅立とうとしている医者がいる。じっとりとした感覚が、体中に纏わり付いて気持ちが悪い。
…それより、どうして俺は寝ているんだ?記憶がない。だが、段々回復する脳で、色々思い出してきた。
(あぁ、そうだ…熱に酔って…)
『…家督は…晴千代に…!』
(哉人は…死んだのか?)
天井の模様を、呆然と見てみたら、襖が開いた。
「って、医者寝てるし…あ、梵天丸、起きたのか」
「あ、あぁ…」
「…涙の跡が付いてんぞ?」
成実は親指で、自分の目の下辺りを突いた。
あぁ通りで、顔がヒリヒリする訳だ。
「悪夢でも見てたんじゃねぇのか?」
言いながら政宗の傍らに座り、額に手を当てた。
「んーまだ熱あるな…つかさ、梵天丸」
「?」
「蒼が来てるんだけど…門番が入れさせてやってなかったから、入れちゃったけど」
「なッ…勝手に何をッ」
驚いて起き上がったが、又フラッと倒れてしまった。無理すんなと呆れる成実。
その頃、蒼丸は小十郎から政宗が倒れたことを聞き、定行と政宗を見舞う為にその寝所へ向かっていた。
部屋の前まで来た所で、話し声が聞こえた。
「蒼が可哀想じゃん」
「哉人が言ったのだ。仕方無かろう」
(政宗様と成実様…?)
「それはお前が用意周到だからそうなったんだよ。そうじゃなきゃ家督は蒼が継ぐだろ」
(…!?な、何を話して…)
「少しは優しくしてやれよ。一応お前の弟なんだから」