複雑・ファジー小説
- Re: 僕と家族と愛情と【誰かコメントをお恵みください】 ( No.97 )
- 日時: 2012/08/26 15:27
- 名前: ナル姫 (ID: q1JDM65v)
「喧嘩?」
「はい…咲ちゃんにとっては、金田城に居ない蒼丸君が弟でないように感じられたそうですよ。蒼丸君にとっては、咲ちゃんはまだお姉さんなんでしょうけど、ね」
「…それでか、お前が俺に彼奴に何か言ったのかと訊いてきたのは」
「えぇ。疑ってごめんなさいね」
クスクスと笑う嫁に、政宗は結構大きめな溜息をついた。
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咲の一行は山道ではなく、安全な野原を通っていた。ただ注意すべきなのは獰猛な野生の動物や、山賊たち。山の上からこの一行を見つければ、襲ってくる可能性は十分ある。
「姫様、お疲れではございませんか?」
「大丈夫よ」
「もう暫しの辛抱でありまする故、何卒」
「えぇ」
咲が応えた瞬間、家臣の一人が叫んだ。
「猪だァアア!!」
一行がその方向に顔を向ける。確かにそこには仲間を二匹ほど連れた猪がいた。
「早う先に進むぞ!」
「はい!」
沢山の声が飛び交う中、晴千代を乗せた籠に猪が突っ込む。
「うわぁ!」
「晴千代様!」
直後、晴千代の泣き声が鳴り響いた。猪は余計興奮状態に陥り、そこらかしこで暴れる。しかも仲間の鳴き声に吊られてか、段々増えていった。これでは進む事は愚か、戻ることさえできやしない。そのうえ少数の家臣しかいないのだ。次から次へと増える猪を倒せるか分からない。
「定行殿!」
「は、はい!」
「貴殿は晴千代様を連れて、政宗様の元へ協力要請を!」
「承知!」
定行は泣きじゃくる晴千代を抱き上げ、米沢に走った。
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(じ…時間係り過ぎたかな?)
二刻以上を政宗の甲冑を磨くのに使ってしまった蒼丸は、額に伝う汗を拭いて部屋から出た。
城内がやたら騒がしい。何かあったのだろうか?てきとうに小十郎を探しながら歩いていると、政宗とすれ違った。そのまま通りすぎるだろうと思ったら。
「グェッ」
後ろ襟を政宗にガッチリと掴まれ首が絞められた。体制が整えられない蒼丸は、引き摺られる形で政宗に何処かに連行される。
「ちょ!?政宗様!?」
政宗は聞く耳を持たずにそのまま進んでいった。門のある方向だ。
「綱元!儂とこやつの馬を!政景!弓と矢を!」
「承知!」
「畏まって候!」
「待ってください!一体どうしたんですか!?」
「時間がない。一度しか言わぬからよく聞け。咲姫の一行が多数の猪に襲われた。家臣は弓矢を持っておらん。猪相手に刀と槍では分が悪い。
殆ど壊滅状態にあるらしい。」
「!!!」
「故に助けに行く。分かったな」
「いやいやちょっと待ってください!なんで僕まで…」
『蒼丸君にとっては、咲ちゃんはまだお姉さんなんでしょうけど、ね』
「何でって貴様の姉だろうが」
「…!!」
「分かったらさっさと草履を履け」
「は、はい!」
蒼丸はいつも冷たく放たれる声を、今日だけ少し優しく感じた。
「小十郎、帰るまで指揮は任せる」
「承知」
「よし、行くぞ」
「はい!」
政宗と彼の弟は背中に矢を担ぎ、肩に弓を掛けて、咲達のいる方向に馬を走らせた。
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定行が晴千代を抱いて走ってこれる距離だ。そう遠くはない。軈て二人はその場所についた。確かに沢山の猪が暴れていて、兵達は体力を消耗しきっている。
政宗は馬を止めずに、一番大きな猪の対角線上を走らせた。手綱から手を離し、矢を取り出して弓を引く。放つと、それは動き回る猪に見事に命中した。
「凄い…」
蒼丸だけではない。兵が皆、政宗の武芸に唖然とした。政宗はまた次の獲物を狙う。
「よし、僕だって…」
蒼丸も馬から降りて、弓と矢を取り出した。
→お久しぶりです!旅行行ってきました!
模試も終わりましたし…良かったですよ、えぇ。成績はちょっとアレですが。
咲と蒼丸の話が長引いてますね。次回で終わらせます。(たぶん)