複雑・ファジー小説
- Re: ナイト†ジョーカー【25日より本格始動!】 ( No.4 )
- 日時: 2012/05/26 14:34
- 名前: Kuruha ◆qDCEemq7BQ (ID: Zn8srJeM)
Episode2:残された時間
「おはようございます、由我様」
「ああ……、おはよう」
寝巻きから着替えて部屋を出ると、ちょうどメイドたちとすれ違った。
俺に向かって会釈をしながら、そそくさと自分の仕事をしようとするメイドたち。彼女達とは逆方向に俺は歩を進めた。
向かう先は食事をする為の広間。いつもどおりならば、きっと既に親父が待っていることだろう。
*
「……悪かったな、いきなり転校しろだなんて」
親父はコーヒーを啜りながら、バツが悪そうにそう言った。
「いいよ、別に」
俺はサプリメントを口に放り込み、それをコップに注がれた水で一気に飲み込んだ。
食器類はすでに片付けられ、テーブルにはコーヒーが入ったカップとソーサー、俺の手元にはピルケースと空になったコップが置かれていた。
「どうせあと3ヶ月だ」
そう。俺たちに残された時間は限られている。それなのに、学生の身分である俺たちは学校へ行かなくてはならない。
「一人息子が居なくなるのは寂しいが、まあ楽しんでこい」
「ああ。……一人、ね……」
親父が不思議そうに俺を見る。本当にそうしたいのは俺のほうなのに。
——なんで、悠華の事を誰も何も言ってこないんだよ。まるでこれじゃあ、初めからいなかったみたいじゃないか。
悠華の使っていた部屋はゲストルームに変わっていて、アルバムや誰の記憶からも悠華の存在は無かったことになっていた。
もちろん俺が殺したという事実は何処にもなく、警察に捕まる事もなかった。
こうなってくると、あれはただ繰り返し見るだけの夢で、悠華なんて存在は、そもそも無いんじゃないかと疑ってしまう。
しかし、あれはやっぱり事実で、悠華は確かに存在したんだと、鮮明な記憶と思い出が教えてくれる。
12月23日、悠華が死に、その夜、ジョーカーは現れた。
俺の中に、何かが生まれた。