複雑・ファジー小説

Re: ナイト†ジョーカー / Episode3更新!! ( No.8 )
日時: 2012/06/02 15:27
名前: Kuruha ◆qDCEemq7BQ (ID: PSM/zF.z)

Episode4:ようこそ、我が生徒会室へ


「失礼しました」

 不思議な事に、あのネックレスを咎められることはなかった。もしかしたら校則違反かもしれないとひやひやしていたんだが。

 むしろそれを見て、理事長はどこか納得したような表情さえしていた。

 理事長室を出て、向かう先は生徒会室。

 案内されたあと、話が終わったら隣の生徒会まで来るようにと言われていたのだ。

 多分、寮まで案内してくれるのだろう。そんな甘い考えを持ちつつ、生徒会の扉をノックした。

 「どうぞ」という返事を聞いて開いた扉のその先には、一人の男子と二人の女子がいた。内の一人は、先ほど案内してくれた城崎だ。

「では会長、わたしたちはこれで」

 俺を見るなり、役目は終わったというように、茶髪の少女は城崎の方を向いてそう言った。

「ええ。お疲れ様、紫亜、茅先輩」

「お疲れー」

 上座の会長席に座る城崎に一礼して、扉、つまりこっちの方へ歩いてくる少女。その少女の耳には、俺とは色違いになる、水色の水晶がついた十字架のイヤリングがあって、ゆらゆらと揺れていた。

 もうひとり、男子生徒の方も、退室すべく歩いてきた。よく見てみれば、そいつも十字架のブレスレットを身につけている。それには、緑色の水晶が中心に埋め込まれていた。

 他の生徒会のメンバーなのだろう。俺が来たのを見計らって帰るのだろうか。……別に案内する為に俺たちが外に出るのだから、そんな必要はない気もするが。

 二人の邪魔にならないよう、一旦扉から離れて廊下に出る。続くように部屋から出てきた女子生徒は、

「乃伽紫亜です。これからよろしくお願いしますね? 先輩」

 と、俺に会釈しながらそう言って、立ち去っていった。

 次に廊下に出てきた男子生徒の方は、

「気ぃつけろよ? ま、もう遅いかもだけど」

 ぽん、と俺の肩に手を置いてから、ばたばたとさっきの娘に追い付くように走りだした。

 その生徒は、途中で振り返って、「あ、観月茅なー! よろしく、後輩!」と自己紹介をしてきた。後輩、と言ってくるあたり、あの人は先輩なのか。で、あの娘は後輩。

「さて、由我くん。とりあえず部屋に入ったら?」

 あの二人の背中をぼぅっと見つめていたら、部屋の中から招き入れる声が聞こえた。城崎から発せられたものだろう。

 そういえば、彼女は何年生なのだろうか。タメ口をきいているあたり後輩ではないだろうが、生徒会長ってことはやはり3年生なのかもしれない。だとしたら、城崎なんて呼び捨てにはできないな。

 いや、さっきあいつは『茅先輩』と言っていた。だから、やっぱり2年——同学年か。

 そんなことを考えながらいよいよもって生徒会室に足を踏み入れた。

 端に置いてある机には雑多に書類が乗っていたが、5つのデスクが繋がった中央の空間にあまりものはなく、あるのはノートパソコンとマグカップくらいだった。

 そして、所謂誕生日席を陣取る城崎は、さっきとは違う妖しい笑顔を見せた。

「ようこそ、我が生徒会室へ。——ナイト様」