複雑・ファジー小説
- Re: ナイト†ジョーカー / Episode4更新!! ( No.9 )
- 日時: 2012/06/03 21:34
- 名前: Kuruha ◆qDCEemq7BQ (ID: PSM/zF.z)
Episode5:生徒会の証
「ない、と……?」
「そう、ナイト。あ、K・N・I・G・H・Tの方ね。夜じゃなくて、騎士の方の、ナイト」
そう言って肘をついて指を組む城崎。さっきは気付かなかったが、その指にはやはりあの水晶のついた十字架のアクセサリーがあった。金色の水晶が光を反射して輝いている。
「由我くんには生徒会に入ってもらうわ。そして、私と一緒に、殺し合いをすることになる」
…………。
「はぁっ!? なんだってそんな……っ」
「その十字架が、生徒会の証。そしてその水晶が、ナイトの証。貴方は受け取ってしまった。故に、拒否権なんてないのよ」
城崎の赤い唇が、にやりと歪んだ。
「いやっ、でも」
「“だまれ”」
俺の反論を述べようとした唇が、城崎から放たれた一声で、ぴたりと動きを止めた。まるで、一時停止したかのように。
「ね? 権利なんてないの、由我くんには。だからね」
生徒会副会長として、ナイトとして、私と一緒に人を——
「“殺しなさい”」
*
才能重視、力を持つ者が絶対であるこの伊ノ坂高等教育機関には、他校にはない異常な校則が存在していた。
生徒会に関する校則。
それは、——会長及び副会長になるには、現職の生徒を殺さなければならない。というものだ。
当然、現職側も黙って殺されるわけではない。
殺す覚悟を持ち、殺される危険を省みない者だけが、この学校のトップに立てる。
*
六年前に俺が起こした事件。その直後の、『俺』による世界の破滅へのカウントダウン。
あの時の『俺』は、自らをジョーカーと名乗り、全世界に向けて警告を発した。
6年後の今日、世界は終焉を迎え、此処は滅ぶ。
慈悲は無い。救いも無い。しかし絶望も無い。
苦しむ必要は無い。嘆く必要も無い。
苦しむ時間などなく、終わる。
誰にも止められない。邪魔できない。
何をしたってお前達の勝手だ。
どうせあと6年で、全員死ぬのだから。
もちろん逆らうのも勝手だ。だが、
相応の報いをくれてやろう。
6年後の今日——つまり今年の12月23日、世界は終わると、自分は言った。
よく覚えている。どういうプロセスで全人類に伝えられたのかは覚えていないけど、確かに俺の声が、この言葉を紡いでいったということは、確実に。
もちろん、異を唱える声はあった。そりゃあ、当時小学五年生の少年の声が、こんなことを言ったのだ。
ふざけている。ノストラダムスよりも信用に値しない。——当たり前だと思う。
大規模な誰かのいたずらだ、と。……大規模すぎる気もするが。
でもそんな声は一ヶ月もしない内に沈静化した。
それはなぜか?
全員死んだからだ。
逆らったから報いを受けて殺された。これが世間の共通見解だ。
だから、殺したのはジョーカーだ。誰もがそう思い、ジョーカーに恐怖した。
……しかし、これに関する記憶だけは、全くといっていいほど俺には存在していないのだ。
悠華を殺してしまったというショックと、あんな事をしでかした『俺』——ジョーカーに対する憎悪で、まともな精神状態ではなかったことはいえ、いつもはある記憶が無いというのは、中々に恐ろしかった。
そして今のところ、あの日以来俺がジョーカーに変わることはないのであった。