複雑・ファジー小説

Re: ポーカーフェイス ( No.8 )
日時: 2012/05/26 22:08
名前: 三月兎 (ID: npB6/xR8)


第三話   蒼


幼馴染が死んだ。

まだ15歳でやっと高校生になったってときに、学校の屋上から飛び降りて。
まるで、プールにダイブするみたいにさ。
いつも笑顔で俺とは真逆の人格をもつ、あいつの名前は白江星太。
初めて会ったときからテンション変だなって思っていた。
小さいときすでに、俺は冷たい目線で世間を見ていたようだ。

あ、幼馴染っていっても、家が向い合せなだけだから。

小学校までは一緒だったけど、公立の中学に俺は行ったから、白江とは別の道を歩いていた。
白江が行ったのは、緑ノ桜川学園。中高一貫の私立高。
金持ちのあいつにお似合いだよな。

学校が変わると、人はいっきに疎遠になるらしい。
家が向かいにも関わらず、白江とはめっきり合わなくなった。
最後に会ったのはいつだったか、もはや覚えていない。どうでもいいことは忘れる主義なんでね。
時間がたつにつれて、お互いに興味がなくなっていき、顔もあわせない。
そんなふうだった。

そのせいか、死んだって聞かされた時も、イマイチピンとこなくて。
オロオロしている弟が、妙にうらやましくなる程に。

それで何年かたって、ふと気づくんだろう。

死んだということは、二度と会わないというより、会えないという事実にさ。

で、警察が渡してきた白江の遺書のコピーを読んだんだけど、全然意図がよめない。

白江、お前小説家にでもなりたかったのか?それとも危ない作詞家か?
ともかく発想がやばい。

警察もこの遺書が、いったい何を訴えているのかわからないらしい。

「池永 蒼さん」

突然、上から声がふってきた。
顔を上げると、疲れた顔をした警察と目があった。
177cmある俺の首が痛くなりそうなほど警察はでかいが、威圧感がびっくりするほどなかった。
そして、白髪交じりの髪をポリポリかきながら、警察はあきらめた表情で俺に聞いてきた。

「星太さんから何か聞いていませんか?南沢さんは聞いていないとおっしゃったのですが・・・」

南沢?・・・あー、明音のところへ行った後だったのか。
明音、この人のことうけつけなかったろうなぁ。

「どうなんですか?」

返事をしなかったからイラついたのか、警察はせかしてくる。

「聞いていません」

俺の言葉に、警察はあからさまにため息をついた。

「ここもかよ・・・」

俺に軽蔑的な視線をむけながら、荒い声色でつぶやいたのだ。

なんだよ、その態度は。

でも、文句もなにも言わなかった。
面倒なことは、苦手というかキライでね。

それに、俺の知る白江は、弱音を吐かない人間だ。
例え、俺にもっと人間性があったとしても、結果は同じだっただろう。

・・・明音はどう感じているのだろうか。
悲しんでる?驚いてる?嘆いている?
・・・どれも違うな・・・。

あいつは俺と同類だ。