複雑・ファジー小説

Re: 本当のわたし ( No.21 )
日時: 2012/06/30 16:59
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: xcAsoLj9)
参照: サブタイトルは思い付いたときだけ書こう。

No.8◇謎の少女、現る

「聖陽学園に行ってちょうだい」
 リムジンに乗り込むなりそう運転手に指示し、真白はノートパソコンを開いた。
 真白は聖陽学園のホームページへ行った。
「幼稚園から大学まで揃った私立の学園——?」
 そこに書かれていることを声に出して読んだ真白はポカンと口を開けた。
「私立… って、あいつは金持ちなの !?」
 私立なら入学金が半端ないだろう。詳しいことはわからないが、ウン十万、ウン百万はいくんではないだろうか。
 そんなことを考えていると、リムジンは止まり、扉が開いた。
「永遠真白様、聖陽学園に着きました」
 その声を聴いて、急いでだてメガネをつけ、キャップを目深に被る。
 リムジンを降りると、目の前には柵を挟んで向かい側に広い敷地がある。中には学校らしき建物やビルかと見間違うような建物が建っている。
「……………ここが、聖陽学園 …… 」
 間抜けなほどにポカーンと口を開けてそれを見ていると、校門から数人の生徒が出てきた。
「 …てことは、ここで待ってればくるかしら… ?」
 キョロキョロと辺りを見回して、校門からは見えない位置に立った。
「 …何なのよ、ここ、聖陽学園——」
 「うーん」と唸って、校門から出てくる生徒を確認する。
 どの生徒も賢そうで金持ちそうだ。
「 …って、あいつもほんとにここに通ってるの?」
 真白の記憶が正しければ、あいつは髪を赤色に染めて、ついでにバカそうな顔をしていた。
「何かの間違いかしら… 」
 ちなみに、彼が聖陽学園に通っているというのはボスから聴いたのだ。しかし、あの人が間違うはずはない。だとしたら、本当にここに通ってるのだろうか。それとも、何か理由があって嘘をつかれたか。
 などと色々考えていると、校門から赤髪の生徒が出てきた。
 背が高いし、髪は赤色なので、とても目立つ。間違いないだろう。
 が、彼は一人ではなかった。横に一人の女子生徒と男子生徒。
 女子生徒の方は、ニコニコと笑っている。肩の下まで伸ばした髪は、光の当たり具合によって茶髪に見える。
 男子生徒の方は、呆れ顔、と言ったところか。黒髪男子だ。
 そして、女子生徒は何かを赤井龍生に話しかけている様子だが、赤井龍生本人はスタスタと歩いて行く。男子生徒はそんな二人についていっている、といった感じだ。
「友達かしら… ?」
 クラスメイトとか、そういうのかもしれない。しかし、それ以外の可能性もある。
 それは、超能力者だということだ。
 超能力者は、見ただけでは判断が出来ない。左腕を見れば簡単に分かるのだが、長袖の服を着ているので、見ることは不可能だろう。
 地下室にある資料を見れば分かると思ったが、あそこは何故だか出入りを禁止されてしまった。
「何で出入り禁止になったのよ」
 文句を漏らして、真白は赤井龍生含め三人の生徒のあとを追った。
 しばらく何かを話ながら歩いていた三人は、人気のない住宅街に入ったところで突然立ち止まった。
 真白が物陰に隠れて様子を伺うと、三人の前に一人の少女が立っていた。
 遠目から見て分かることは、髪は金に近い明るい茶色をしていて、黒いドレスを着ていて、自分よりも幼いということぐらいだろうか。
「ゴスロリだ! かわいーい!」
「 …おい」
 はしゃぐ女子生徒を男子生徒がたしなめる。
「誰だよ、お前」
 赤井龍生が少女に向かって問うた。
「ルーテア・カルツよ」
「外人さん?」
 茶髪の女子生徒が首を傾げる。
「それは今どうでも良いだろ」
 黒髪の男子生徒が呆れたように突っ込む。
「 …あなた」
 ルーテア・カルツがついと指を差した先には、赤井龍生。
「何だよ」
「あたしたちの仲間をどこにやったの?」
「はぁ? 仲間?」
「そうよ、昨日、あなたを殺しに行ったきり、戻ってきてないのよ」
「あ、そう。けど、知らねーよ」
 隠れて聴いていた真白は、思った。あぁ、秘密組織の地下牢にいる、と。
「龍生くん、あの子と友達?」
「今の会話からして、友達ではないだろう」
 空気が読めないらしい女子生徒は男子生徒にやはり呆れられながら言われた。
「どこにいるのか、教えなさい」
 ルーテア・カルツが冷たく言い放つ。
「だから、知らねーって言ってるだろ!」
 少々苛立ちながら赤井龍生が答える。
「 …なら、無理矢理にでも教えてもらうまで——」
「 …?」
「Angst regel」
 ルーテア・カルツが静かにそう言うと、右の瞳が金色に輝いた。
「何語?」
「 …… 璃亜」
 首を傾げる女子生徒——璃亜に男子生徒が呆れたように言う。
 一方の赤井龍生は、軽く目を見張り、そのまま動きを止めた。
「……………」
「……………」
「……………え? 何?」
 特に何も変化がない赤井龍生がぽつりと呟くと、ルーテア・カルツは大声を出した。
「なんであなたにはチカラが効かないのよ!」
「……………へ?」
「ちくしょう! 覚えてらっしゃい !!」
 目に涙を浮かべながら叫ぶと、どこかへ走り去っていってしまった。
「……………何だったんだ?」
「目が金色になったね、オッドアイだね、かっこいいね」
「璃亜、お前な……………」
 三人はそのまま歩き出した。
 真白は三人を追うことはせず、ただ考えていた。
(あの子は、一体——)
 チカラを持つ少女。
 一体、何者なのか——。