複雑・ファジー小説
- Re: 本当のわたし【参照300突破感謝!】 ( No.29 )
- 日時: 2012/07/01 17:08
- 名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: 7H/tVqhn)
- 参照: 明日から期末テストです→更新出来ません。申し訳ない。
No.12◇秘密組織の楽しい会議
『今から赤井龍生についての会議を行う!』
秘密組織の建物全体に響き渡る青年の声。
『今すぐ会議室に集まれ!』
どこか自棄になったような言い方。
「あー、なんでそんなことしないといけないのよ」
真白は溜め息をついて、会議室へ向かって歩き出した。
「…ったく、さっきは暴れまわったから、眠いっていうのに——」
細長い机にイスが何個も置かれている一つに座った月乃は盛大に欠伸をした。
「一眠りするか…」
そう呟いて机に突っ伏す月乃の隣に座った真白は溜め息をついた。
「何で玲音さんがわたしの目の前の席に座ってるんですか!?」
「だって、真白チャンの顔がよく見えるし!」
ヘラヘラと笑う玲音を疎ましげに見たあと、真白は腕組みをした。
「全員そろったか!?」
会議室に現れるなりそう言ってくる。
「見ればわかるでしょ」
しれっと返すと、青は真白を睨んだ。
「黙れ! 点呼を取る!」
「点呼って、必要ですかー?」
玲音が手を挙げて質問する。
「黙れ!」
玲音を睨み付けてから、点呼を始める。
「真白!」
「……………はい」
ムッとして、返事をする。
「玲音!」
「ほーい」
間の抜けた返事をした玲音を再び睨み、点呼を続ける。
「月乃!」
「………」
「寝るな!!」
バンッと机を叩くと、月乃は目を開けた。
「何で寝てるんだ!?」
「眠いから」
そう言って、また目を閉じる月乃に青は怒鳴った。
「寝ーるーなー!」
「良いから早くしてください」
真白が言うと、青は不満げに彼女を見たあとに点呼を再開する。
「風太郎! ——風太郎はどこだ!?」
青が再び机を叩いたとき、会議室の扉が開くと同時に甘い香りが広がった。
「クッキーを焼きましたよー!」
ニコニコと笑った風太郎が、皿にてんこ盛りに積まれているクッキーを机に置いた。
「お召し上がりください!」
「こんなもの良いから、とっとと席に着け!!」
怒鳴る青を見た風太郎は席に着くと口を開いた。
「カルシウムが足りてないから、牛乳飲みますか?」
「牛乳はキライだ!」
「そんなんだからチビなんだよ」
玲音の言葉に青は異常に反応した。
「『チビ』って言うな! 銀髪チャラチャラ男!!」
「ネーミングセンスないですね!」
「黙れ黙れ黙れ!」
三度青が机を叩くと、皿にてんこ盛りに積まれたクッキーが幾つか落ちた。それを見た真白は落ちていないクッキーを口に運んだ。
「…あ、おいしいですね」
「そうでしょー?」
「あぁ、ホントだ!」
クッキーを食べ始めた真白と玲音を見て、青は怒鳴り散らす。
「お前らいい加減にしろぉ! 僕を何だと思ってる!?」
「チビでイマイチ頼りないけど、まぁ一応この秘密組織のボスっぽい位置についてる、まだまだお子ちゃまなジョー君」
「玲音! お前——」
しかし、その言葉を机を叩く固い音が遮った。
「青。とっととしろ。こっちは眠いんだよ」
「……………」
それまで騒がしかった会議室が一瞬にして静かになる。
「……………じゃあ、会議を始める」
ごほんと咳払いをした青は、ここのボスは一体誰なんだ、と思った。
「赤井龍生をこの秘密組織に引き込もうと思う」
「何でですか?」
真白の問いに、青は少々苛立ちを見せながら答える。
「彼のチカラは発火能力、Burnist〔燃やす者〕だ。そのチカラならあの実験体は簡単に倒せるからだ」
「実験体」とは、普通の狼の倍程は大きい狼のような生物のことだ。
昔、超能力を作り出した科学者が狼で動物実験を行った。そして、その狼たちは実験室を逃げ出し、今もどこかで生きている。それを全て殺すのがこの秘密組織の仕事なのだ。
「何の為にこんなチカラを作り出したのかしら——」
真白の小さな呟きは、しかし誰にも聞こえなかった。
「でも、実験体は最近弱くなってきてます——って、真白チャンが言ってました!」
玲音の発言に、青は眉をひそめた。
「それは本当か?」
真白に向かっての問いに、彼女は薄ら笑いを浮かべた。
「ボスだっていうのに、そんなことも知らないんですか?」
「——…」
青は怒ったように目を見開いたが、何も言ってこない。それは、真白が言っていることが正しいからであろう。
「だから、赤井龍生は必要ないと思います」
好い気味だ、と思いながら真白は言った。
「それとも、そこまで赤井龍生に執着する理由があるんですか?」
「イケメン君、欲しい!」
玲音の言葉に、彼を除いた全員が半眼になる。
「…赤井龍生は置いといて、実験体が弱くなっているというのは気になるな」
青が目を伏せる。
「少し、調べてみる」
「じゃ、会議はお開きだ!」
それまでずっと黙って話を聴いていた月乃がさっさと会議室をあとにする。真白もそれに続いて会議室から出る。
「いやー、会議はいつも面白いねー♪」
にっこりと笑って玲音も会議室から出ていった。
風太郎は青を見て、にっこりと笑った。
「紅茶、飲みますか? 淹れてきますね」
そう言って、会議室から出ていく。
一人残された青は頭を抱えた。
「僕は、——っ…」