複雑・ファジー小説
- Re: 本当のわたし ( No.37 )
- 日時: 2012/07/17 18:30
- 名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: AzXYRK4N)
- 参照: 暑い暑い暑い。今年に入って初めてクーラーつけました。
No.18◇笑顔
「玲音?」
玲音の様子を見に来た月乃は、彼の部屋のドアをノックした。
「玲音、いるのか?」
もう一度声をかけると、玲音がドアを開けた。
「…玲音——」
月乃は玲音の表情を見て、目を見張った。
酷い表情をしている。
「…玲音、大丈夫か?」
自分よりも背の高い彼の頭を子供にするように撫でると、彼は静かに目を伏せた。
「…———!」
そのとき、月乃は突然玲音に抱き締められた。
一瞬目を見張ったが、月乃も彼を抱き締めてやった。
よしよし、と慰めるように彼の背中をさする。
あぁ、もう、このままじゃ、あのときから変わってないな、と月乃は思い、玲音に気づかれない程度に苦笑いした。
暫くの間、そうしていると、彼は月乃から離れた。
「ごめん、———」
そう謝ってくる彼は、先程よりはマシな表情をしているが、まだ酷い表情だった。
「——玲音」
まるで、幼い子供のような表情をしている。大切なものをなくした、幼い子供——。
本の少しでも衝撃を与えれば、壊れてしまいそうだ。
壊したくない、と願ったのは。あれは、心からの願いで。
それは今も変わっていない。
「玲音」
出来るだけの優しい声音で彼の名を呼ぶと、彼は潤んだ瞳でこちらを見詰めてきた。
「会議、行くぞ。玲音がいないと、始められないんだから」
「……はい——」
玲音はこくりと頷いた。
「ほら、いつまでもそんなカオしてたら、皆に何か言われるぞ!」
パチンと両手で軽く玲音の頬を叩くと、彼は月乃の手に自分の手を重ねた。
「そうですね——」
玲音はそう言って、哀しそうに笑った。
◇◆◇
哀しそうに笑う顔はとても綺麗で。
でも、やっぱりいつものあの笑顔の方が好きだから。
だから、そんなふうに笑わないで。
そんな哀しい笑顔にさせるものは、全て私が壊すから。
だから、もっと笑って。嬉しそうな表情で。
そしたら、私も笑顔になれるんだから。
◇◆◇