複雑・ファジー小説
- Re: 本当のわたし ( No.38 )
- 日時: 2012/07/25 14:45
- 名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: uyKWZpxa)
- 参照: 何だか自分でもわけがわからない。
No.19
「では、会議を始める!」
会議室に全員が集まったのを確認してから青が口を開いた。
「まず、今日の奴についてだ!」
「ルーテア・カルツとヒロハですか」
真白の言葉に青が半眼になって頷いた。
「そう、そいつだ。ルー…なんとかと、ヒロハだ!」
「記憶力悪いですねー」
風太郎の言葉に青は青筋を浮かべたが、無視して続ける。
「あいつらはチカラを持っている!」
「…そりゃあ、あれを見れば誰だってわかりますよ」
呆れたような真白の言葉に青は青筋をはっきりと浮かべる。
「真白、お前な…!」
しかし真白は青と視線を合わせないよう正面に座っている玲音を見た。
そういえば、玲音さんは何で遅れて来たんだろう?
ふと真白の中でそんな疑問が浮かんだが、まぁ月乃が呼びにいったらすぐに来たしどうでも良いか、と思った。
「——おい、真白、聞いてんのか!?」
その言葉に我に返る。
全然話聞いてなかったなー、と思いながら「はいはい、聞いてましたって」と笑顔で言う。それに対して青は苛立ったような、呆れたような、何とも言えない表情をした。
「…で、その二人は実験体の実験をしている!」
「実験体は実験をするためにあるんだから、良いでしょう」
「真白、だからお前は黙っとけ!」
青が本気で怒ってきたのを感じた真白は仕方なく彼の言葉通りに黙っておくことにする、
「もともと実験体は僕たちのチカラの実験をされている。しかし拒絶反応を起こした犬は実験室から逃げ出し、そのまま森に住み着いて、現在に至る」
「そんなこと前にも聞きましたって」と言おうかと思った真白だが、真剣な表情をしている青を見ると、そういうことも言えない気がして何も言わないでおく。
「そして、あの二人を追ってたどり着いたのは、昔実験室として使っていた所だった」
「…それって、あのオンボロの壊れかけの家のことですか?」
念のために真白が確認すると、青はこくりと頷いた。
「まぁ、僕たちが追っているのに気が付いて、あそこに逃げ込んだだけかもしれないが——」
その実験室というのは、実験体が住み着いている森の中に一軒だけポツンと建っている、何とも奇妙な実験室なのだ。まあ、実験室というのは名だけで、見た目はただの洋館にしか見えないのだが。
真白も一度だけそこに訪れたことがある。深い森の奥に建っている寂れた洋館。実に不気味で、出来ればあんなところは二度と行きたくない、というのが真白の感想だった。
「あいつらは実験体を更に強くしているそうだ」
「そうですね、身をもって体感しましたよ」
嫌味ったらしく言う真白を一瞥した青。
「そして、このチカラを使って、何かをするつもりらしい」
「……『何か』って、何ですか?」
半眼になって訊く真白に青の表情は少し翳った。
「それは……、分からない」
青はキッと窓から見える、実験体が住み着いている森を見据えた。
「だが、あいつらには気を付けた方が良い」
「…——」
そういえば、と真白は思った。いつもなら必ず何か喋る玲音が全く喋っていない。それに、月乃も寝ていない。
「——?」
何か、あったのだろうか? あったとしたら、月乃が玲音を呼びに行ったあのときか。
風太郎は気付いているのかと彼を見ると、いつも通りニコニコと笑っているだけだった。