複雑・ファジー小説

Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.102 )
日時: 2012/08/22 17:21
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)

+66+


「先輩」

その翌日だった。いつも通りの時間に一人で出勤して、着替えようとした時だ。
振り返ってみると、ラフだけど決してださくない私服姿の孤独が、ロッカールームの入り口に立っていた。
少し髪が伸びたかな。後、隈がある。眠れなかったのかな。不安で?不安がる事なんか、何もないのに。バカなのは、変わりない。
でも、なんだろう。少し、暗くなったかな。

「孤独、おは、」

「ねぇ、先輩」

おはよう。いつもはそう始まる私たちの関係も、少し変わったか。
行き場のない半端に開いた口を、閉じる。
持っていたエプロンを置いて、孤独に向きなおった。

「先輩、まさかさぁ、」

孤独が一歩近づいてくる。私は動かない。
確かに、いつもと違う様子の孤独は、少し怖い。でも、私は逃げちゃいけないと思う。こうなるまで追い込んだのは、私だ。私の行動だ。
店長と買いに行った首輪は、私のロッカーの中。お別れは、告げようと思えば告げられる。

「お見舞いとか、行かないっすよね」

卓巳のことか。近くの病院に入院している卓巳。
私はとりあえず、頷いておいた。

『その時には俺も呼べよ』

……あぁ、そうだね。
店長との約束を守るために、別れを告げるのはやめようか。
今は。