複雑・ファジー小説

Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.111 )
日時: 2012/08/19 22:01
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)



+74+


孤独に、何か言われた気がする。私はそれを一言で返していた気がする。それで、済ませた。孤独と話したくなかったから。そうしたら、孤独は眉をひそめていた気がする。時々、傷ついた顔をしていた気がする。それを全部、私は無視した。
客への対応は完壁なはずだ。
気が付けば勤務時間は終わっていたから、ロッカールームで素早く着替えて、引き留めようとする孤独の声を無視して、挨拶をしてくる戸口さんに軽く頭を下げて、アパートまで一直線で帰った。
エレベーターを待っていられなくて、階段を駆け上った。鍵を手慣れた手つきで開けて、床に寝そべる。電気もつけない。
全部、面倒だ。なんか、疲れた。久しぶりに、孤独を見た。孤独と喋った。でもあれは、もう孤独じゃない。私の言いなりになっていた孤独じゃない。昔の卓のようになってしまった孤独。
嫌だよ。私、どうしたら良いの。孤独は、どこに行っちゃったの。
私の、孤独。……私の?そう、だよ。孤独は私の物じゃない。私は孤独の物じゃないけど、孤独は私の物。それで良かったんじゃないの。それで良いって言ったのは、孤独じゃないの。

頭を抱えて頭皮を爪で削っていると、頬り投げたバッグの中の携帯が、悲鳴を上げた。