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複雑・ファジー小説
- Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.118 )
- 日時: 2012/08/23 17:51
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w93.1umH)
- 参照: http://www.youtube.com/watch?v
+80+
「本当に来てくれたんだね」
体を起こしてベッドの中に居る卓巳の姿を確認して、私は立ち止った。でも、すぐに頭を動かして、スライド式の軽いドアを閉める。
卓巳の右目には、白い眼帯がつけられていた。あの日の赤を思い出して、私はすぐに目を逸らした。
この病室には四つのベッドがあって、そのうち三つが埋まっている。その中の一人である卓巳は、私をじっと見ていた。
私はベッドの近くまで行って、足元に視線を落とす。同じ部屋にいる二人は、私たちの様子をちらちらと見てきている。正直、鬱陶しい。
「座りなよ」
卓巳が苦笑いをする声が聞こえて、思わず肩が跳ねて、安っぽい緑の椅子に腰を下ろす。また、卓巳の言う通りになっている。癖かもしれない。
私は、顔を上げた。卓巳は、まだ私を見てくれていた。
青いパジャマの前が、少しはだけている。そこから除く鎖骨に、赤い印があって、思わず俯きそうになった。
「正直、不安だったんだよ。桐は、ボクのことが、っ、嫌いだろ?」
何が不安だったんだよ。お前が心配とか、不安になる要素が、どこにあるんだよ。どうして、そんな息を詰まらせながら、苦しそうな顔をしながらそんなこと言うんだよ。意味が分からない。
明かに、私への疑問の言葉なのに、私は頷くことも、首を横に振ることもしなかった。
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