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複雑・ファジー小説
- Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.123 )
- 日時: 2012/08/24 21:22
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w93.1umH)
+83+
どうやって病院から出てきたのかは、よく覚えていない。気が付けば、電車の中でまた、街を見ていた。人が少ないな。こんなんで、大丈夫なのかな。
私、こんなんで平気なのかな。私、このまま卓巳から逃げて、大丈夫なのかな。私は、一体どうしたんだろう。卓巳はどうしてあんなことを言ったのだろう。全く意図が掴めない。何が、なんだっていうんだ。どうして、卓巳はあんな風になっちゃったの。
『僕が、桐を直してあげるから』
扉を飛び出す私に、卓巳は確かにそう言った。
直すって、何を。私を?私は、直すほどの欠点があるの。歪みがあるの。壊れているの。私は、壊れているの。どうして、卓巳が私を直すなんて言い出すの。どうして、私が卓巳なんかに直されなきゃいけないの。不安定で、私を自分から捨てておきながら、いまさら縋って来るような男に。店長を傷つけようとして、返り討ちにされた男なんかに。
でも、でも、違う。違う。違う。そんなんじゃない。もう、違う。卓巳は私がバカにできるような、そんな人間じゃない。
私なんかに、気を使ってくれるような、手を伸ばしてくれるような。
そんな。
成長しようとする、前に進もうとする。
そんな。
そんな、優しい。
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