複雑・ファジー小説

Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.124 )
日時: 2012/08/24 21:53
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w93.1umH)



+84+


先輩に電話しても、メールしても、反応してくれなかった。
ねーちゃんのすっかり冷たくなった視線を背中に浴びながら、家を出た。涙が溢れて来た。周囲の人はずっと俺を見ている。必死に手の甲で涙を拭う。
先輩、先輩。桐先輩。茅菜先輩。桐茅菜先輩。
崩れそうになる足を必死に動かして、先輩のアパートを目指す。先輩、まだ寝ているのかな。それとも、どこかに出かけているのかな。どこかにって、どこ。まさか、まさか。
涙が止まった。知らず知らずのうちに、早歩きになる。走り始める。先輩。声を出しそうになる。名前を呼びそうになる。耐えた。変人になるのは、まだ早い。
急いで階段を駆けあがって、愛しのあの場所を目指す。
毎日、毎日、そこだけが俺の心を癒してくれる場所で。そこだけが、俺の居場所で。俺の生きる意味が、そこにあって。
その部屋がある階について、目に飛び込んできたのは、部屋の鍵を開けようとしている私服姿の先輩だった。

「孤独」

「先輩っ、なんで、なんで、電話とか、無視したんすかっ」

純粋な思いが口から出る。だらだらと、みっともなく。
先輩は、手を軽く動かして、部屋の鍵を開ける。
先輩が、変な顔をしている。
そんな顔が見たいんじゃないんだよ。俺、先輩を責めているわけじゃないんだよ。違う、違うんだよ。

「……こど、」

「病院、だったからっすか?」