複雑・ファジー小説

Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.127 )
日時: 2012/08/29 22:32
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w93.1umH)



+86+


「……どうして、とか。言うでしょ」

先輩は俺を見ている。ただ、俺を見ている。そのことは、すごく嬉しいはずなのに。前までなら、嬉しいはずなのに。見られているだけじゃ、満足していないなんて。
言ったら怒られちゃうよね。俺、すごく我儘になって欲張りになった。欲を先輩に見せるようになった。先輩にだけは知られたくないって、知られたら嫌われるからって、ずっと隠してきた感情を、先輩に見せてしまっている。
俺、先輩に嫌われたかも。
そんなこと、気にしちゃいられなくなっているのかもしれない。
どうして。どうして。

「教えてあげる」

要らない、なんて言えない。
だって、気になる。あれだけ行かないでって言ったのに。念を押したのに。俺の思い通りになんて、なってくれないっていうの。
俺は、先輩のことが好きだ。好きで溜まらなくて。先輩に見てほしかった。ずっとだ。俺はずっと先輩が好きだったんだ。
先輩が好きで、好きで。
でも、思いを真面目に伝えたら、押し付けてしまったら、先輩が壊れてしまいそうで。
それなのに。

「孤独、家に入ろうか」

先輩が、部屋の中に消える。
しばらくして、立ち止まっている俺に、先輩がドアの隙間から出てきて手招きをした。