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複雑・ファジー小説
- Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.128 )
- 日時: 2012/08/31 20:00
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w93.1umH)
+87+
いつもは上機嫌でその部屋に入るのに、今日は当然俯き加減で入った。
床を見ているとあの日、先輩に押し倒された事を思い出して、涙に目の前が滲みそうだった。
仕方なく、顔を上げると、俺が最後に入った時と同じように、先輩の臭いが充満した、先輩の部屋だった。
部屋の隅のベッド。片付いたシンク。いろんな色のクッション。丸い絨毯。小さな机。
まだ、変わっていない。俺はまだ、この部屋を知っている。
正直、この部屋に先輩に招かれて入るなんて、無いと思っていた。
これからはもう先輩に我儘を言って、俺はそれで満足するつもりだったから。
「忌屋卓巳に、会って来たの。自分の意志でね」
俺が何ていうか、俺がどう自分に良いように解釈するのか。それを理解して、予想して、先輩は先に手を打った。
そうか。自分で判断したのか。先輩は自分がそれを望んでいる事を知って、行ったのか。先輩が自分のことを自分で決めたなんて。
俺は靴を脱いで、クッションを抱えて座っている先輩に近づいた。
先輩の背後にある窓ガラスには、情けない顔をした俺が立っていた。
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