複雑・ファジー小説

Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.130 )
日時: 2012/09/02 19:43
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w93.1umH)



+89+


「どうしよう、俺、俺、先輩のこと、好きなのに」

初恋だった。今までどんなに素敵な人が俺に関わってきても、何も感じなかったのに。それなのに、先輩が現れた途端だ。俺の全てが壊れた。
先輩の行動が気になる。視線が気になる。
先輩の魅力、なんて、言葉にできない。できないのは、分からないから。俺は先輩にどうして惚れたんだろう。先輩のどこが好きなんだろう。分からない。でも先輩が好き。それだけは分かる。
先輩には、彼氏が居るって。そういった。他でもない先輩自身が。
先輩は今まで見せたことのないような嬉しそうな、幸せそうな顔で、そう言った。居るよって。俺の気持ちも知らないで。
イライラして、もやもやして。そんな変な気持ちに酔った俺は家に帰ってきて、ねーちゃんに縋った。
いつだって、ねーちゃんは俺の味方で、ヒーローだったから。助けてくれると思った。こんな変な感情から、早く逃げたかったから。
ねーちゃんは俺の話を黙って聞いていてくれた。先輩のこととか。全部全部。
話が終わるとねーちゃんは、俺の髪を撫でてくれた。ぜんぜん嬉しくなかったけど、安心した。
涙が止まらない。先輩のことを考えると、どうしても涙腺が緩む。

「……孤独は、お姉ちゃんが守ってあげるから」

ねーちゃんはそう言った。

苦しそうに、吐き出すように、諦めるかのように。