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複雑・ファジー小説
- Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.135 )
- 日時: 2012/09/12 22:36
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w93.1umH)
+93+
そっと、目を開く。
孤独がいた。我慢していた涙を、頬に伝えながら私を見ていた。震える手で、自分のシャツをつかんでいる。
皺になっちゃうよ、なんて私は口に出さない。
私の言葉が予想外だったようだ。孤独はすっかり、私が孤独を否定しているって思っていたようだから。
そう。怖かったよ。私を求める孤独が。昔の卓みたいな孤独が。でも、違った。孤独はただ、私の愛が欲しかっただけ。私に認めてもらいたかっただけ。ただ、それだけだったんだ。
「ごめんね」
私は言った。
私の言葉で孤独を壊してしまわないように、気を付けながら。
私の言葉の意味を孤独は理解できないようで、黒い瞳から私を外さない。
私はテーブルの下にあったバッグを取って、その中から店長と買った首輪を取り出した。
それを見て、孤独の止まりかけていた涙がまた流れ始める。
私の手の中にある、私と孤独をつないできた物。
本当は、孤独にもなって欲しかった。私のように。卓に縋っていた私は、首輪がすべてだった。首輪が無いと、卓から離れてしまいそうで。そんな不安を背負って欲しかった。仲間が欲しかった。同類が欲しかった。それで自分を救おうと支えようとしていた。
だから、ごめんね。待たせて、ごめん。私は私を認めるよ。
巻き込もうとして、ごめん。孤独は強いね。私のようにならなかったね。
買ったばかりの首輪を、私はゴミ箱に入れた。
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