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複雑・ファジー小説
- Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.19 )
- 日時: 2012/06/11 22:07
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)
+14+
少し遅れて待ち合わせ場所に行くと、すぐに卓を見つけた。懐かしいその姿に、涙が滲んで来そうになる。でも必死に堪えた。
私は平然を装いながら、彼に近づく。
私がすぐ傍まで来て、やっと彼は私を見下ろすように、視線を移す。
そして、ほほ笑んだ。
「久しぶり、桐」
声が出なかった。一瞬、夢じゃないかって、思うほど。奇跡なのだろうか。もう会えないかと思っていたのに。それなのに、彼はまた私の前に現れてきてくれたのだ。
唇が震えるけど、喉の奥から声を絞り出す。
「……なんか用」
まるで、『来てやった』みたいな言い方をする私。嫌な奴だな。
そんな私に、ほほ笑んでくれる、卓。
卓だけだよ。私を求めてくれるのは。私に必要なのは。
あれ。なんだろう。突っかかる。卓の顔と同時に、違う顔もちらつく。
本当に、卓だけ? 私を必要としているのは、本当に、卓だけだっけかな。なんか、違う気がする。なんだろう、この違和感。
「それ聞くだけなら、電話で聞けば良かったじゃん。ねぇ、桐」
私の手をさりげなく握る彼の手を、振り払うことができない。耳に唇を近づけてきて、吐息を感じる。息が、乱れる。ダメだ、こんなんじゃ。ポーカーフェイスが保てない。
「ボクに、会いたかったんでしょ?」
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