複雑・ファジー小説

Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.36 )
日時: 2012/06/17 09:33
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)



+19+


ぎちりと食い込む卓の爪に思わず顔をしかめる。何かあったのだろうかと思って、顔をそちらに向けると、私の脇腹を凝視している卓がそこに居た。息が荒く、手が震えている。それを見て、私の中の何かに光が灯った。

歯形。歯形、だ。
私はそれが何か知っている。
孤独。孤独。孤独だ。
朝から感じていた、何かの消失感の正体は、孤独だった。卓の事で頭がいっぱいで、孤独のことを忘れてしまっていた。私ってば、だめだな。孤独はあんなにも私を見てくれるのに、私は全然孤独のことを見ることができていない。

「何、コレ。ねぇ、何コレ」

卓は私と視線を合わせずに、繰り返す。どんどん爪が食い込み、やがて私の皮膚を破った。鮮血が、ベッドに垂れる。
おいおい。止めてくれよ。まるで行為で血が垂れたみたいじゃ無いか。て、そんなことはどうでも良い。
私は痛くてたまらないので、卓の手を掴もうと、手を伸ばす。しかし届かなかった。卓のもう一方の手が、私の手を絡みとる。そこでやっと、卓と視線が交わった。
細められて、影を孕んだ、冷たい目。
怖くて、びくりと体を震わせてしまう。卓は掴んでいる私の手さえも、締めてくる。跡が残りそうなくらい、強く。

「桐、誰?」