複雑・ファジー小説

Re: 思案中 ( No.4 )
日時: 2012/06/03 22:00
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)


+3+


「先輩、俺腹減った」

偉そうに座り込んだバカは、私が今夜食べた晩御飯の残りを眺めながら、呟いた。
テーブルの上に出しておかなければ良かった。

「ハッキリ言いなよ」

私はバカの首輪をつかんで、引っ張り上げた。顔が近いけど、今は気にならない。
なんでだろう。バカから近づいてくるときは、不快なのに。

それにしても、私が選んであげた黒い首輪は、このバカによく似合っている。

「これ、食べてもいい?」

「……いいよ」

私が答える前に、コイツは皿をレンジに突っ込んでいた。
呆れるが、コイツらしい。その間に私は水を用意してやった。
こんなに世話を焼いてやるなんて、私はなんていい先輩なんだろう。ただの後輩なんかに。
ただの、か。
コイツにとっても私はただの先輩かな。
……別に良いけど。

「先輩、明日も来て良い?」

私が用意した水で喉を潤しながら、バカが甘えるような声で言ってくる。
いつまで私に甘える気だろう。
私はいつまでもバカに構う気ではない。
いつまで。

「……知らない。気分による」

「えっ! そんなの無しっすよ! 明日バイトじゃないから先輩に会えないじゃないっすか! 俺、先輩に会わないと死んじゃう!」

そんなの知らないよ。
私はコイツに会わなかろうが、どうってことない。

「死んでみなよ」

レンジから皿を取り出しながら、私がバカを真顔で見つめると、コイツは今までのふざけた顔を一瞬で消して、光の無い目で私を見つめ返す。
ちょっとぞくっとした。

「マジっすよ」